カテゴリー: ハンドボール観戦

  • ハンドボールの魅力-タイムアウトのタイミング

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    ・タイムアウトのタイミング
    ハンドボールは前後半30分ずつで行われ、各チーム合計3回までタイムアウトを取れます。ただし前半だけで3回、後半だけで3回タイムアウトを取ることはできません。また後半残り5分を切ってからのタイムアウトは1回だけです。残り5分で2回続けて取ることはできません。

    タイムアウトのタイミングを見ていれば、試合の流れや監督の考えなどが見えてきます。基本的にタイムアウトは、流れが悪い時に取るものです。セットオフェンスが練習通りでなかったり、相手のディフェンスシステムが急に変化した時などに、タイムアウトでやるべきことを整理します。だからタイムアウト明けのセットオフェンスはとても重要です。ここで1点を取れれば、流れを呼び戻せます。逆にシュートに行けずに終わると、何のためのタイムアウトなのかわからなくなります。

    当然相手もわかっていて、タイムアウト明けにディフェンスシステムを変えてきたりもします。6:0DFから5:1DFに変えたり、オールコートマンツーマンでプレスをかけてくるなど、ディフェンスを変えることで相手の作戦を消してしまうのです。相手のタイムアウト明けにディフェンスシステムを変えてきたら「この監督、なかなか意地悪だな」と思ってください。もちろんほめ言葉ですよ。自分たちのハンドボールを貫くのも大事ですが、相手の嫌がることをやるのが戦いの鉄則です。

    前後半の残り1分を切ってからや、後半の24分過ぎは、タイムアウトが多くなる時間帯です。ハンドボールの1回の攻撃はだいたい30秒ぐらいが目安です。バスケットボールのようにショットクロックはありませんけど、30秒ぐらいで攻撃が完結しないと、パッシブプレー(シュートを狙わない消極的なプレー)を取られてしまいます。

    前半29分40秒でのタイムアウトなら、残り20秒をしっかり使って、1点取って前半を終わろうという意思統一がなされるはずです。下手に早打ちをして、相手の速攻を許してしまうと、+1点のはずが-1点になってしまいます。後半の29分15秒なら、攻撃した後の守り方まで指示があるでしょう。2点ビハインドの場合は、あまり手数をかけずに点を取って、さらにプレスをかけてボールを奪って同点に持ち込むといった作戦が考えられます。タイムアウトが2回残っている時には、後半の24分過ぎで1つ使っておくのも悪くありません。残り5分でタイムアウトを2回取れないのだから、その前に1回使って、終盤の戦い方を整理しておけば、タイムアウトが無駄になりません。
    久保弘毅

  • 2015/16 EHF チャンピオンズリーグ ベスト8決定

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    ハンドボールチャンピオンズリーグのベスト8が決まりました。

    HC Prvo plinarsko drustvo Zagreb (ザグレブ)

    Paris Saint-Germain Handball(PSG)

    THW Kiel(キール)

    FC Barcelona Lassa(バルセロナ)

    HC Vardar(ヴァルダル)

    MVM Veszprem(ヴェスプレーム)

    SG Flensburg-Handewitt(フレンスブルク)

    KS Vive Tauron Kielce(キェルツェ)

  • 今週末はプレーオフ(ハンドボール)-4

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    ・男子第二試合、トヨタ車体×トヨタ自動車東日本

    レギュラーシーズンの対戦は1勝1敗。その日の状態次第で、結果も変わりそうです。

     

    トヨタ車体は故障者を多く抱えながらも、若手の台頭で日本選手権を制しました。津屋がエースポジションで年間通して安定した働きを見せ、196cmの笠原が60分間真ん中を守れる安定感を身につけました。津屋、笠原といった「素材」を、時間をかけてものにしてきた酒巻監督の育成力は、もっと評価されていいでしょう。「無名でも身体能力の高い選手に最高のトレーニングを提供する」のが、トヨタ車体の育成方針です。

     

    決めごとの少ないフリーオフェンスにこだわるチームなので、短期決戦ではやや安定感を欠きます。セットオフェンスが手詰まりになり、簡単に速攻を許す時間帯が、60分間のうちのどこかに必ず出てきます。踏みとどまるために重要なのがディフェンスです。サイズとフィジカルを武器とした6:0DFでどれだけ守れるか。国内随一の阻止率を誇るGK甲斐の大当たりにも期待したいところです。

     

    対するトヨタ自動車東日本は、リーグ加盟4年目で初のプレーオフ進出を果たしました。中川監督はシーズン中「早く勝ち過ぎた弊害が出ている」と苦言を呈することもありましたが、年明けからの戦いぶりは見事でした。大学時代に攻撃専門だった選手がほとんどにもかかわらず、チーム全体に3:2:1DFの哲学を落とし込み、個人能力とチーム力の両方を上げてきました。

     

    攻撃では濱口、玉井のダブルエースの得点力に加え、左利きの山田がどれだけ得点できるかがポイントになるでしょう。山田の得点が伸びると、東日本の勝ちパターンです。また松本、吉田の両サイドにも注目してください。地味ですけど、実にサイドらしい、玄人好みなサイドプレーヤーです。特に松本のシュートテクニックは、国内トップクラスと言っていいでしょう。近め、遠めを正確に打ち分ける技術を堪能してください。

    久保弘毅

  • 今週末はプレーオフ(ハンドボール)-3

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    ・女子第二試合、オムロン×ソニーセミコンダクタ

    偉大なる左腕エース・藤井が抜けて、大黒柱の東濱もケガがち。今季のオムロンは大幅に若返り、苦戦続きでした。それでも黄慶泳ヘッドコーチの我慢強い起用が実を結び、エース候補の吉田が初の得点王になりました。この1年で攻撃のバリエーションが増え、相手との駆け引きも上達しました。今季のオムロンはよくも悪くも吉田が点を取らないと勝てないチーム。吉田のシュート精度が勝負のカギを握ります。

     

    戦力的には苦しいながらも、GK藤間、東濱、永田、勝連と、勝ち方を知る選手がいるのがオムロンの強み。特に東濱がコートにいるだけで、チームの落ち着きが違ってきます。東濱を中心に守り勝つことができれば、2年ぶりの優勝も夢ではありません。昔からオムロンは、どこよりも守りを重視してきました。

     

    対するソニーセミコンダクタですが、レギュラーシーズンは飛騨高山に星を落とすなど、いまいち乗り切れませんでした。しかし10月の国体では、日本代表組がいない中で控え組が奮起し、延長戦の末にオムロンを下して決勝まで勝ち進んでいます。特にルーキーの鈴木は国体でアピールして、レギュラーの座を勝ち取りました。2枚目が守れる左サイドで、1対1の強さもあり、なかなか面白い存在です。

     

    ソニーは伝統的にスキルフルな選手が多いチームです。女子球界の生きる伝説・田中に代表されるように、小さくても巧い選手がボールを展開します。でもロングシュートが足りないので「巧いんだけど、シュートに持ち込めない」時間帯がどうしても出てきます。セットオフェンスをスムーズにするためには、大砲の活躍が必要不可欠。安倍、山野といったロングが打てる選手がはまれば、全体の得点も伸びるでしょう。

     

    ロースコアの守り合いが予想されますが、守りではオムロンに一日の長があります。ただしソニーのGK飛田が勝負強さを発揮したら、試合はもつれるでしょう。いくつになっても向上心が衰えないベテランGKは、勝負どころで抜群の集中力を発揮します。

    久保弘毅

  • 今週末はプレーオフ(ハンドボール)-2

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    男子第一試合、大崎電気×大同特殊鋼

    日本代表を数多く抱える大崎電気は文字通りのタレント軍団。今季は代表選手が不在の間に、夏山、時村、馬場、ルーキーの柴山らが力をつけ、さらに選手層が厚くなりました。普段どおりの力を発揮できれば、間違いなく優勝候補筆頭なのですが、ことプレーオフに限ると「よそ行き」のプレーに終始して、なかなか勝てません。

     

    勝つためにはセットオフェンスが単調にならないことも大事ですが、まずはディフェンスから。いい時の大崎は密集を作れています。悪い時はそれぞれが孤立してしまうので、いかにディフェンスで一体感を作れるか。ディフェンスラインを裏から支える、GK木村の声かけがカギを握ります。日本代表でもオルテガ監督の特殊なシステム(クロスアタックを多用し、2対2を作らせないシステム)を理解し、試合中にこまめに声をかけながらディフェンスを修正し、株を上げました。また馬場をトップに据える変則の5:1DFや、夏山、時村といった守備で体を張れる選手が、流れを変えるキーマンになりそうです。

     

    大同特殊鋼はプレーオフに限っては特別な強さを誇ります。レギュラーシーズンはふらふらしていても、プレーオフになると見違えるような一体感を発揮し、接戦をものにしています。震災でプレーオフが中止になった2011年をはさんで、プレーオフでは足かけ10年負けがありません。

     

    今季はシーズン途中に元韓国代表の名ポスト・朴重奎が加わり、さらには内定選手で大学NO.1のバックプレーヤー東江が入りました。この2人が加入したことで、シーズン当初とはまったく別のチームになりました。朴重奎のライン際での強さは今もワールドクラス。ただ重くて強いだけでなく、体を波打たせるようにして相手の力をかわします。若手の成長株・藤江のスピードも必見。大同が勢いに乗る時は必ずと言っていいほど、藤江の速攻やカットインが決まります。あとは武田、千々波、岸川、野村ら勝ち方を知るベテランが勝負の節目に活躍すれば、いつもの大同の勝ちパターン。堅い5:1DFとGK久保(侑)の大当たりで、短期決戦で強さを発揮します。

    今年も「最後に勝つのは大同」なのか。それとも大崎が歴史を変えるのか。4試合の中で最も注目度の高い対戦カードです。

    久保弘毅

  • 今週末はプレーオフ(ハンドボール)-1

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    今週末はプレーオフ

     

    ・国内最高峰のタイトル

    3月26、27日に日本リーグのプレーオフがあります。シーズンの締めくくりで、国内の四大大会(実業団選手権、国体、日本選手権、日本リーグ)の中でも最も権威のある大会です。このプレーオフのタイトルを獲るために、選手たちは1年間戦っています。

     

    準決勝4試合の組み合わせを順に見ていきましょう。

     

    ・女子第一試合、北國銀行×広島メイプルレッズ

    レギュラーシーズン全勝の北國銀行は、実業団選手権、国体、日本選手権も無敗で制しています。今季負けなしの北國が無傷で四冠を達成するかが、大きな見どころになります。日本代表の角南をケガで欠いてもなお選手層が厚く、様々な組み合わせで勝負できるのが強みです。一番の売りはGK寺田のライナースロー。八十島、鰍場の両サイドを走らせるだけでなく、時には真ん中にいるポストの横嶋(か)にも速攻のパスを通します。サッカーのサイドアタックと中央突破を使い分けるかのような、速攻でのロングフィードは必見です。

     

    セットオフェンスでは、日本代表で活躍した横嶋姉妹の「縦の2対2」が軸になります。妹の横嶋(彩)がセンターで自由奔放に動き回り、姉の横嶋(か)がポストで合わせるコンビネーションは、まさに阿吽の呼吸。特に横嶋(か)は史上初の9割を越えるシュート率を記録しました。勝負どころでは必ずと言っていいほど得点に絡んでくるので、ライン際で動き回る横嶋(か)からは目が離せません。

     

    対する広島メイプルレッズはレギュラーシーズン最終戦の飛騨高山ブラックブルズ岐阜戦に勝って、最後のひと枠に滑り込みました。急激な若返りを図った影響もあり、不安定な戦いが続いていましたが、両サイドとポストはしっかりしています。左サイドの松村は日本代表の左サイドでもあり、肩が外れたような独特のシュートフォームが持ち味です。右サイドの門谷は貴重な守れる左利き。高山は攻撃力だけに限定すれば国内NO.1のポストです。ライン際で高山をどれだけ生かせるか。高山がバックプレーヤーに回る時間帯もありますが、できればポストに専念させたいところです。

     

    守りではGK毛利の阻止率に注目です。最終戦では阻止率8割という、信じられないような数字を残しました。ノーマークへの反応がよく、大胆なキーピングで会場を沸かせます。第一試合の最大の見どころは「8割止めるGK毛利VS9割決める横嶋(か)」と言ってもいいでしょう。北國優位は間違いありませんが、広島はGK毛利の大爆発があれば、大逆転の可能性も出てきます。

     

    久保弘毅

  • ハンドソープボール

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    世界ゆるスポーツ協会をご存じでしょうか?
    スポーツを誰もが楽しめるように、日々新たな競技を考案している団体です。

    こちらで考案されたスポーツの一例としてイモムシラグビーというのがあります。
    これは、脇から足首まである、イモムシのユニフォーム(というより胴巻き)を着て行うラグビーで、全く走れないという特徴があります。
    タックルもできません。
    そのように動きずらい障害を作ることで、誰もが(子供やお年寄りであっても)楽しめるように、と競技が考案されているのです。
    このイモムシラグビー、画像を検索してご覧いただくと、ユーモラスな姿にほっとすること請け合いです。

    さて、世界ゆるスポーツ協会の手にかかると、ハンドボールがこうなります、というのがハンドソープボール。
    ソープ、即ち石鹸を手に、ボールにつけて行うハンドボールです。
    こちらはテレビでも何度か紹介されており、KAT-TUNの中丸雄一さんがシューイチで体験されたりもしています。アンバサダーには東俊介さんのお名前があります。

    ルールは簡単。通常のハンドボールとほとんど同じなのですが、1チーム7名ではなく6名、しかもうち1人が「ソーバー」になります。
    ソーパーって初めて聞かれるポジションだと思いますが、選手の手にハンドソープを塗る係りです。
    試合はボールを落としたりすると手にハンドソープが足され、試合が進むにつれて、だんだんとぬるぬるとなっていきます。

    このぬるぬるのボールがつるんっと滑るところにゲームの楽しさがあります。
    そのため、運動神経の良し悪しで活躍できたりできなかったりがあまりない、つまりは参加した誰もが楽しめるというところが特徴です。

    この競技、試合を行う施設の了解をきちんと取っておく必要がありますが、ハンドソープはそのうち蒸発してしまうので、想像されるよりもキレイに終わります(石鹸、ですしね)。
    いい靴を履いてプレーする必要は全くありません(ジャンプシュートなど、ボールが持てないため機会がないですし)が、普段使いのハンドボールシューズを持っていったりすると、返ってキレイになるかもしれません。

    ルールは以下の通り
    1:基本的にはハンドボールと同じで、前後半が10分ずつ。
    2:1チーム6人
    フィールドプレーヤ4人 GK1人 ソーパー1人
    3:試合前に2ソープを手に付ける。
    4:ボールを落とした場合、落下させた人がソーパー(フィールド外)
    の所に行き、手に1ソープを付ける。
    5:胸でキャッチすると反則(キーパーをのぞく)で、1ソープ追加。
    6:キーパーがボールを落としたらソープ追加
    7:ボールがフィル度から出たらボールにソープを付ける
    などなどです。
    詳しくは下記のホームページをご覧下さい。

    ハンドソープボール ホームページ
    http://yurusports.com/archives/106

    画像は上記ホームページより。

  • ハンドボールの魅力-6:0DF

    6:0DF 久保弘毅
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    6:0DFは6mのゴールライン付近に6人が一線になって並ぶシステムです。最もオーソドックスで、相手にスペースを与えない守り方です。上背のある選手を揃えて6:0DFをすれば、ロングシュートを枝(ディフェンスの上げた腕)で防げますし、間を割られるリスクも少なくなります。大型選手がライン際にべったりと引いて(通称「べた引き」)守れば、理論上は最強です。

    ところが6:0DFの枝の上からロングシュートを打ち込まれると、苦しくなります。国際大会になると、11mぐらいから打ち込めるバックプレーヤーが、どの国にも必ず1人はいます。ロングが怖くて前に出ると、ポストにパスを落とされて、ポストを守ろうとするとロングを打ち込まれる――こうなると完全に悪循環ですね。マークの受け渡しが不十分になり、2人揃って前に出ようものなら、ポストが完全にノーマークになります。

    ロングとポストのシンプルな2対2だけど、ロングシューターに威力があり、ポストプレーヤーが大型だと、これだけやられてしまいます。中東勢にやられる時のよくあるパターン。「決してきれいなハンドボールじゃないんだけどな」といった負け惜しみのひとつも言いたくなりますが、ハンドボールはコンタクトスポーツで、なおかつサイズスポーツでもあります。

    こういう大きなポストを守るために、6:0DFだけどポストだけはマンツーマンで守る方法もあります。相手のポストが移動した時に、ディフェンスがそのままついて行っているかどうかが、ひとつのチェックポイントになります。

    その他にも6:0DFだけど2枚目(両端から2人目)が高めの位置でピストンする守り方もあります。見た目が4:2DFのような6:0DFもあります。この場合は2枚目の運動量が生命線になってきます。

    オーソドックスな6:0DFで有名なのは、男子ならトヨタ車体、女子ならオムロンでしょう。北國銀行はサイズがない分、同じ6:0DFでもピストン(出たり戻ったりする動き)が頻繁になります。高校では女子の高松商業がオーソドックスな6:0DFだけで日本一になっています。マンツーマンなど奇策を一切使わず、相手のロングシューターを上手に封じます。高松商業の田中潤監督は「ウチは運動量が少ないから『あまり守ってなさそうなのに、なんで守れるの?』とよく質問されますけど、一生懸命頭を使って守っているんですよ」と言っていました。戦術理解がしっかりしていれば、オーソドックスな6:0DFが最強なのでしょう。

  • ハンドボールの魅力-ディフェンスシステムを見る

    ・ディフェンスシステムを見る 久保弘毅

    ディフェンスシステムが変わると、試合の流れも変わります。また、どういったディフェンスシステムを使い分けているかで、チームの特徴も見えてきます。

    ハンドボールはゾーンディフェンスで守ります。なぜならハンドボールはバスケットボールよりもコートが広いので、1対1をマンツーマンで守り切るのが難しいからです。1対1の原則は、スペースが広ければ広いほど攻撃側が有利になります。

    だからディフェンス6人をいろんな形に並べて、目の前の選手を「そのまま」マークしたり、隣とマークマンを「スイッチ」(もしくは「チェンジ」)したりしながら守ります。原則として目の前のゾーンにいる選手が、自分の受け持ちになります。この「自分のマークが取れている」状態かどうかを見ていくと、わかりやすいでしょう。

    相手が速攻で押してきた時も、まずは個々がマークを取ることから始めます。セットディフェンスの最初の状態では必ずマークが取れているはずです。攻撃側はマークを外したりミスマッチを作ったりするために、ポジションチェンジで揺さぶりをかけます。逆に守る側はマークがずれたり、重なったりしないよう、声を出して隣との連携を図ります。

    「そのまま」と「スイッチ」を上手に使い分けて、マークの受け渡しが完璧であれば、理論上は失点することはありません。しかし実際にはサイズのミスマッチができたり、ノーマークの選手を作ってしまったりと言った事態が起こります。また、どのシステムにも必ず弱点があり、変則的なシステムほど、はまった時は鮮やかですが、崩されるリスクも大きいことも知っておきましょう。

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  • ハンドボールの魅力-点数をコントロールする

    ・点数をコントロールする 久保弘毅
    点差だけでなく、全体の得点数にも注目してください。得点数を見れば、試合のコンセプトも見えてきます。ハンドボールは1試合25点ぐらいが目安になり、20点を切るようだとロースコア、30点を超えるようならハイスコアと言われます。セットオフェンスの「良質な得点」だけだと、25点ぐらいが限度です。上積みをするには、速攻での「シンプルな得点」がどうしても必要になってきます。

    たとえば高校の男子で、速攻が得意なチーム同士になると、42-34のようなスコアになりがちです。反対に女子のように守り合いを志向するチーム同士の対戦では14-12のようなロースコアに落ち着きます。速攻で押さずに、セットオフェンスをゆっくりやることで、攻撃回数をわざと減らしているのです。

    ハイスコアを志向するチームとロースコアを志向するチームが対戦したら、テンポのコントロールが見どころになってきます。ロースコアにしたいチームは、走りたい相手をじらすかのように、わざとゆっくりボールを運びます。時間をかけてセットオフェンスを組み立てていくうちに、いつの間にか相手の足が止まってしまうのが狙いです。逆にハイスコアにしたいチームは、序盤から速攻、クイックスタートで押しまくり、相手の体力を削りにかかります。「訳がわからないうちに失点が増えていく」状況に相手を追い込むのが、速攻で勝負したいチームの狙いです。

    こういったゲームコントロールが巧みなのが、今季の三重バイオレットアイリスです。基本はロースコアで統一しながら、守りでリズムを作りたい相手には速攻を増やして、セットで守る時間を作らせません。櫛田亮介監督がしっかりとゲームをデザインしている印象があります。

    櫛田監督
    櫛田監督