・点数をコントロールする 久保弘毅
点差だけでなく、全体の得点数にも注目してください。得点数を見れば、試合のコンセプトも見えてきます。ハンドボールは1試合25点ぐらいが目安になり、20点を切るようだとロースコア、30点を超えるようならハイスコアと言われます。セットオフェンスの「良質な得点」だけだと、25点ぐらいが限度です。上積みをするには、速攻での「シンプルな得点」がどうしても必要になってきます。
たとえば高校の男子で、速攻が得意なチーム同士になると、42-34のようなスコアになりがちです。反対に女子のように守り合いを志向するチーム同士の対戦では14-12のようなロースコアに落ち着きます。速攻で押さずに、セットオフェンスをゆっくりやることで、攻撃回数をわざと減らしているのです。
ハイスコアを志向するチームとロースコアを志向するチームが対戦したら、テンポのコントロールが見どころになってきます。ロースコアにしたいチームは、走りたい相手をじらすかのように、わざとゆっくりボールを運びます。時間をかけてセットオフェンスを組み立てていくうちに、いつの間にか相手の足が止まってしまうのが狙いです。逆にハイスコアにしたいチームは、序盤から速攻、クイックスタートで押しまくり、相手の体力を削りにかかります。「訳がわからないうちに失点が増えていく」状況に相手を追い込むのが、速攻で勝負したいチームの狙いです。
こういったゲームコントロールが巧みなのが、今季の三重バイオレットアイリスです。基本はロースコアで統一しながら、守りでリズムを作りたい相手には速攻を増やして、セットで守る時間を作らせません。櫛田亮介監督がしっかりとゲームをデザインしている印象があります。