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チームの見どころ
【湧永製薬】昨年度男子4位
昨シーズンは成田、東江がドイツ留学から戻り、久しぶりに戦える布陣になった。迫力のある試合をしたかと思うと、チームでまとまりを欠いたりと、好不調の波は激しかったものの、3年ぶりのプレーオフに返り咲いている。上位とも互角に戦えるだけの戦力は揃ってきたので、あとは杉山裕一新監督のもと、どれだけ一体感を作り出せるか。全員が素直に力を発揮し、互いに補うことができれば、タイトル奪還も夢ではない。
【チームの戦い】
【予想布陣】
LW:子安(矢田)
LB:成田(谷村)
CB:佐藤(東江、原)
RB:中浦(仁平、小賀野、稲毛)
RW:野村(福田)
PV:今井(助安、松本、稲毛)
GK:志水(伊藤、荻原)
6:0DF
選手層の厚さは、上位3チームにひけを取らないので、あとは組み合わせ次第。特にバックプレーヤーの3人はもっと自由に組み合わせてもいい。たとえば「エースの成田の代わりに谷村」ではなく、成田と谷村を同時に出場させても面白い。元エースの谷村を上手に使って、得点を上積みできれば、攻撃力がアップする。東江のトリッキーなシュートを生かしたい時は、佐藤と東江のセンター2枚を同時に使って、球回しのバランスを整えるのも悪くない。
守備面では、成田の相棒となる、3枚目を守れる若手が出てきてほしいところ。ドイツ帰りの松本、新人の助安にメドが立てば、近年増えている真ん中での失点を減らせるだろう。杉山監督は「DFにこだわりたい」と、湧永山脈の復活をテーマに掲げている。名GK志水がいるうちに、もう一度DFを立て直したい。
【人事往来】
IN
助安(大阪体育大)
岡本大(中部大)
OUT
新名(大分で教員に)
左サイドで勝負強さを発揮した新名が抜けるが、本来ならば子安が入るポジション。ケガで昨シーズンを棒に振ったが、今年は問題なし。
新人補強は、ポストの助安のみ。「湧永=ポスト」のイメージがあるので、助安も一級品のポストに育ってほしい。ベテランの今井がケガがちなので、世代交代は急務。
今年も稲毛、原、矢田の3選手が海外のトライアウトを受験するなど、毎年海外留学で選手が少なく、ケガ人が出ると人手不足に陥る。留学システムを続けるのなら、チームで抱える人数を、現状の18人からもう少し増やした方がいいかもしれない。
【指揮官】
杉山裕一監督
誠実な大男は、いつも湧永山脈の真ん中で体を張っていた。現役引退後は営業職で頑張り、コーチを経て、今年から監督に就任した。弁が立つタイプではないが、ハンドボールへの情熱は人一倍で、人の心の機微を感じ取る繊細さもある。選手個々で温度差のあるチームを、どのようにまとめるか。喋りが達者な山中基コーチとの二人三脚で、名門復活に取り組む。
【キープレーヤー】
成田幸平
2年間のドイツ留学を経て、フィジカルが強くなった。意識も高くなった。ファイトを前面に押し出すようになったのはいいことだが、チームメイトとの温度差にいら立ち、試合中にフラストレーションを貯めることも多くなった。とはいえ、成田の「勝ちたい気持ち」は、「強い湧永」復活に欠かせないものだし、全員が成田のレベルまで意識が上がれば、かつてのような「戦う集団」になれるだろう。ただし、成田にも歩み寄りは必要。若手にはもう少し優しい言葉を。味方のミスを尻ぬぐいして、その後に言うべきことを論理的に言えるようになれば、チームも大きく変わる。
【この技を見よ!】
・今井昭人の片手キャッチ
ゴールエリア内のバウンドパスを片手で捕球して、ゴールにねじ込む。「湧永の伝統芸」とも言うべき片手キャッチが、今井の最大の武器である。DFからも邪魔されない場所でボールをもらえるから、パスカットのリスクを防げる。色んなところで2対2ができる。山口修(現・高知中央高監督)から受け継いだ「匠の技」を、これからは若いポストにも伝えてほしい。強いポストがライン際を制圧し、理詰めのセットOFでゲームを支配するのが、強い湧永の戦い方でもある。
久保弘毅
チームの見どころ
【トヨタ車体】昨年度男子3位
【チームの戦い】
昨シーズンは社会人選手権、国体の二冠を獲ったものの、懸念されていたDFの弱体化の影響で、残り2つの大事なタイトルを逃してしまった。引退した藤田を復帰させて、真ん中のDFを強化したものの、安定感は戻らなかった。使いながら育てていくチームで、毎年成長株が出てくる楽しみはある反面、底上げがタイトルに直結しないのがもどかしい。フィジカル強化をはじめとする個の育成力は間違いなくリーグで一番。勝利と育成を高い次元で両立させたい。
【予想布陣】
LW:藤本(杉岡)
LB:津屋(石戸、吉野)
CB:門山(玉城、木切倉)
RB:高智(熊谷)
RW:渡部(内海)
PV:菅野(笠原、藤田、岡元竜)
GK:甲斐(加藤、岡本大)
6:0DF
ベンチ入り全員を使いながら戦うスタイルは変わらない。アキレス腱断裂で丸一年を棒に振った木切倉の復帰はプラス材料。カットインとパス回しのイメージが強かったのに、復帰後には9mの外からロングを放つ「超回復」を見せていた。
選手層は厚いが、あえて不安なポジションをあげると、右バックとポスト。右バックは高智にムラがあり、熊谷は故障がち。ポストは人材豊富とはいえ、攻撃での決め手に欠ける。日本代表で真ん中に抜擢された笠原が、攻守にどれだけ支配力を示せるか。
【人事往来】
IN
吉野(明治大)
杉岡(中央大)
OUT
松村(GKコーチ専任)
﨑前(引退)
高木(引退)
勝負強かった松村、﨑前が引退したが、戦力的な目減りはあまり感じられない。新人の吉野、杉岡は早くもレギュラー争いに食い込んでいる。吉野はちょっぴりアーム気味のテークバックなのに、シュートのコントロールが抜群。ハイコーナーぎりぎりに打ち込む精度は新人離れしている。杉岡はスピードとシュートテクニックがあり、不動の左サイドである藤本を脅かす存在に。
5月の社会人選手権を最後に、ポストの高木が引退したのは残念。ヒザの状態が思わしくなかったとはいえ、攻撃力は車体のポストの中では一番だったので、得点力の低下が懸念される。
【指揮官】
香川将之監督
酒巻清治前監督が日本代表のチームマネージャーになったので、香川コーチが監督に昇格した。酒巻前監督はいずれ香川監督に禅譲するつもりでいたので、既定路線の人事である。非常に理知的で、人の意見を聞ける賢さがあるので、現役時代からチーム内だけでなく、社内での評価も高かった。強いフィジカルと原理原則を大事にする車体のハンドボールを継承しつつ、これまでのフリーオフェンス一辺倒から、もう少し整理されたハンドボールを目指していくという。選手のよさを的確に表現できるボキャブラリーがあり、新監督でありながら、なかなか味わい深いコメントをする。
【キープレーヤー】
津屋大将
全国的には無名でも、高い身体能力とハンドボールを理解する頭脳があれば、社会人で大きく伸びる――そんなトヨタ車体のコンセプトを象徴する選手が津屋だ。日本リーグに入れるかどうかの当落選上の選手が、しっかりと身体を作り、正しいハンドボールを理解して、打ててさばけるバックプレーヤーになった。これまでは右肩上がりに成長していたが、昨シーズンは入社4年目で初めて壁にぶつかった。以前のような「チームを勢いづける脇役」から「チームを勝たせる主力」にステップアップしたからこそ、求められるハードルも高くなる。「もうひと手間をより丁寧に」を心がけて、オーソドックスかつ理にかなったプレーで状況打開を試みる。
【この技を見よ!】
・門山哲也のコースの打ち分け
以前の門山は強烈な流しのシュートを持ちながら、引っ張りのシュートが甘くて苦労していた。しかし昨年から胸周りが柔らかくなり、「ボール1個分長く持てるようになった」ことで、コースの打ち分けの精度が上がった。常にGKを見ながら、GKの動き出しと反対の方向に打てているから、見ていて気持ちいい。ダイレクトに間を割る強さに加えて、GKの逆をつくシュート技術があるから、短時間で効果的な働きができる。苦しい場面でもOFを立て直せる力を買われて、日本代表に復帰した。
久保弘毅