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おりひめジャパンの布陣

おりひめジャパンの布陣

 30日から熊本で始まった女子アジア選手権へ向けて、日本協会のFaceBookにポジションごとの顔写真が掲載されました。なかなかよくできているので、こちらを御覧ください。
https://www.facebook.com/406719829403678/photos/a.438999459509048/1941184769290502/?type=3&theater

 このメンバー表を元に、各ポジションを見ていきましょう。

LW:今大会で最も大事になってくるポジションです。世界選手権で活躍した松村杏里(ソニー)がいない分を、どうカバーするか。7人攻撃のフィニッシュを確実に決めて、なおかつ6:0DFで左の2枚目が守れる選手がいないと、攻守のバランスが崩れてしまいます。
2枚目を守れる守備力ということでは、ヒザのケガから戻ってきた田邉夕貴(北國銀行)が第一候補。ウルリック体制初期のメンバーでもあり、語学力もあるのが強みです。課題だった「勝負どころでの1本」を決めてくれれば、チームに勢いがつきます。
田邉にない勝負強さを持っているのが勝連智恵(オムロン)。2枚目を守れるサイズはありませんが、大事なところで1本決めてくれるしぶとさがあります。左側がベンチに近い時は、2枚目に守備要員を入れて、勝連のクラッチシュートに期待してもいいでしょう。前回のアジア選手権の準決勝・中国戦でも、終盤に同点シュートを決めています。
田邉、勝連以外にも、攻守のバランスを整える意味では、センターの大山真奈(北國銀行)が左サイドに回って、2枚目を守るという選択肢もあります。

勝連
勝連

昨年のアジア選手権準決勝(中国戦)での、勝連の同点シュート

LB:エースポジションはキャプテン原希美(三重)の体調次第。試合の入りを落ち着かせるためにも、スタートは原になる可能性が高いと思われます。ヒザの回復がやや遅れていましたが、以前よりも打点の高いミドルが打ち込めるようになってきました。エースポジションでアウトスペースを割って、守っても3枚目で積極的に前に仕掛けてと、攻守にチームを背負えるタフさが原の持ち味です。
 攻撃面の上積みという意味では、大学生の渡部真綾(東海大)に期待したいところ。チーム全体にある程度守れるメドが立ってきたので、遠くから打ち込める若手を融合させていくのが、次への課題になります。原で攻守のバランスを整えつつ、点の欲しい場面で渡部を効果的に使うのが理想の形。ロングだけでなく、強靭な体を活かしたカットインでも、相手にダメージを与えてくれる選手です。
 塩田沙代(北國銀行)はエースというよりは、2枚目、3枚目の両方を守れる有能なバックアップ。ここ1~2年でおどおどした感じがなくなり、2次速攻でも迷いなく打ち込める強さが出てきました。

原

キャプテンの原は攻守に体を張って、チームを引っ張る

CB:メインはもちろん横嶋彩(北國銀行)。国内だと打ちながらリズムを取る司令塔ですが、国際大会では我慢強くボールを回して、最後の最後に間をこじ開けます。国内向けと海外仕様のプレースタイルを使い分けられるようになって、本物のセンターに近づいてきました。DFでは左の1枚目に入り、速攻での展開力やフィニッシュで、チームの得点を伸ばしてくれるでしょう。
 2番手にはベテランの石立真悠子(JJ・GANG)がいたのですが、アジア大会でヒザを負傷し、今回は欠場。石立のような「セットOFで流れを変える」役割は、大山真奈(北國銀行)に頼るしかありません。横嶋よりもゲームメイカーらしい選手だし、2枚目を守れる力もあります。今大会は大山が左サイドとセンターの両方で、すべての穴を埋めるくらいの活躍をしてもらわないと困ります。それだけ重要な「8番目の選手」の位置づけです。
 初選出の石井優花(オムロン)は攻撃力のある司令塔。大学時代の奔放な得点力が発揮できれば、代表でも戦力になるはずです。

横嶋彩
横嶋彩

横嶋は世界での戦い方を覚えて、いいセンターになった

RB:左利きの角南唯(ニュークビン/デンマーク)と右利きの多田仁美(三重)を使い分けるポジション。メインの角南唯は、ワイドな位置取りからゴールに向かって一直線に間を割って得点します。多田はちょっとイン寄りの位置取りから、強引に間を割ります。角南唯の正しい位置取りに相手が慣れたところで多田を投入すると、相手がたまに混乱するのがハンドボールの面白いところ。昨年の世界選手権メインラウンド1回戦(オランダ戦)で延長戦に持ち込めたのは、途中出場した多田の得点力のおかげでした。前日まで全然当たっていなかったのに、大事な場面で器用したウルリック・キルケリー監督も凄かったし、期待に応えた多田も見事でした。
 角南唯の正しい位置取りと無理のないカットインを味わいつつ、どのタイミングで多田が理屈を超越したゴリゴリカットインを炸裂させるかに注目してください。

角南唯
角南唯

角南唯の位置取りは美しい

RW:日本のストロングポイントです。池原綾香(ニュークビン/デンマーク)が高確率で決めてくれるから、日本の7人攻撃が機能します。たとえシュートを外したとしても、堂々とした彼女の振る舞いに、誰もが「次は必ず決めてくれる」と信じられます。角南唯からのラストパスだけでなく、2人のスカイプレーなど、左利き2人のコンビネーションは日本の貴重な得点源です。
 今シーズンからドイツに渡った藤田明日香(ドルトムント/ドイツ)も、本場で揉まれた成果を見せてくれるはず。速攻のスピード、シュートフォームの美しさだけでなく、ここ一番で決め切る強さが出てくれば、このポジションは盤石です。
 秋山なつみ(北國銀行)は右バックと右サイド両方のバックアップ。技術はありますが、場馴れするのに時間がかかるタイプなので、早い段階で経験させておいた方がいいかもしれません。

池原綾香
池原綾香

池原は本当にたくましくなった

PV:信頼できるメンツが揃っています。副将の永田しおり(オムロン)は攻守に体を張り、角南果帆(ソニー)は色んな選手と2対2ができます。永田美香(北國銀行)は今年に入って強さが増してきました。堀川真奈(広島)はサイズの割には脚力があります。
 永田しおりは2011年からずっと日本代表に定着しているDFリーダー。永田しおりと原が真ん中にいると、どんなDFシステムでも安心です。大きい相手にもひるまずコンタクトする分、退場のリスクがつきまといますが、そこで永田美香が成長した姿を見せてくれたら、日本の未来につながります。
角南果帆はクレバーな選手で、DFでは2枚目に入って上手に駆け引きします。特にオープンDFになった時の角南姉妹の運動量は要注目です。攻撃でも、くさびになる永田しおりと、動いて合わせる角南果帆の使い分けが見どころのひとつ。2人が揃ってライン際で仕事をするから、おりひめジャパンの7人攻撃は必ずプラス1を作れます。

永田しおり
永田しおり

永田しおりは守りの要。当たりの強さと危機管理能力はチーム随一

GK:ノルウェー出身の亀谷さくら(ニュークビン/デンマーク)は、女子日本代表で歴代最高クラスの守護神。当たりまくる日の迫力は間違いなくワールドクラスです。ただし何試合かに1回は「全然当たらない日」が出てくるので、そのエアポケットの時間帯をどうフォローしていくかが課題です。
 やっぱり信頼できるのが41歳の飛田季実子(ソニー)。パッと使われても、すぐに仕事をして、チームを落ち着かせます。技術、人柄ともに「おりひめジャパン最後の砦」と言っていい人物です。仮にベンチから外れたとしても、素晴らしい人間性で若手を支えてくれます。
 日本の将来のために育成中なのが板野陽(広島)。ぐにゃぐにゃと長い手足でよく止めます。柔らかいから予測不能な捕り方をする反面、スローイングでは長い手足を上手に使いこなせないところがあります。それでも心身共に強くなってきているので、できるだけ多くの経験を積んでほしいGKです。

亀谷さくら
亀谷さくら

韓国、中国、カザフスタンに勝つには、亀谷さくらの爆発力が欠かせない

スタッフ:ウルリック・キルケリー監督は、いつの間にか選手たちをいい方向に導く、不思議な能力を持っています。この2年間で、選手全員の語学力が上がったのは、キルケリー監督の隠れた功績と言っていいでしょう。戦術面の細かいニュアンスを詰めるのが、櫛田亮介コーチ(三重監督)の仕事。ドイツでのプレー経験があるので、ヨーロッパのハンドボール観を汲み取り、意訳できる人物です。今回からベンチに入るアントニ・パレツキGKコーチの手腕にも注目です。

久保弘毅

おりひめジャパン代表合宿

おりひめジャパン代表合宿

 11月15日に東京のナショナルトレーニングセンターで、ハンドボール女子日本代表(おりひめジャパン)の公開練習と記者会見が行われました。30日から始まる熊本でのアジア選手権を前に、くまもんが応援に駆けつけるなど、注目度の高い公開練習になりました。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 練習終わりのストレッチに乱入するくまもん。選手1人ひとりとハイタッチをして、コミュニケーションを取っていました。

くまモン
くまモン

 今回のアジア選手権は、1年後の熊本世界選手権のプレ大会でもあります。世界選手権のポスターも完成しました。なかなかオシャレで、気の利いたフレーズが入っています。左のポスターには「誰がゴリひめじゃい?」の文字が。ちなみに二の腕のモデルは、GGS(ゴリゴリシスターズ)のリーダー・多田仁美(三重)という奇跡の一致。GGSの「おりひめジャパンをゴリひめジャパンにしたい」との野望が、一歩前進しました。「誰がゴリひめじゃい?」「私だよ!」

くまモン
くまモン

 「お手てでつなぐ希望。」の方は、モデルが横嶋彩(北國銀行)。証拠写真はこちら。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 記者会見では、ウルリック・キルケリー監督が「この1年でいい準備ができた。どこが相手でも勝って、アジアのチャンピオンになりたい」と、アジア選手権への抱負を語りました。就任当初の「我々には経験が必要だ」と繰り返していた頃とは、自信の程が違います。オーソドックスな6:0DFに、栗山雅倫前監督から受け継いだオープンDF、さらにはもう一種類の計3つのDFシステムが、おりひめジャパンのストロングポイントです。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 キャプテンの原希美(三重)のスピーチ。彼女のしゃべりには、いつも感心させられます。入りの「こんにちは」から柔らかなトーンで、自分の思いを伝えてくれます。口先だけの「感謝の気持ち」ではなく、自分の言葉で話しかけてくるから、彼女の言う「感謝の気持ち」は、ストンと腹に落ちるのです。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 ウルリックがもう1人増えたのか!? いいえ、今回からGKコーチのアントニ・パレツキコーチがベンチ入りします。昨年の世界選手権では、デンマーク代表のコーチとして、キルケリー監督が率いた日本代表と対戦しています。キルケリー監督とはデンマークリーグで共にプレーしていた旧知の仲。デンマーク男子の名GK二コラス・ランディンを指導したこともある、腕利きのGKコーチです。ウルリックがしれっとビッグネームをスカウトしてきました。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 パレツキコーチの愛称は「アンテック」。GKの板野陽(広島)によると「練習のバリエーションが豊富で、今までメニューがかぶったことがないくらい。ただ動くだけでなく、頭を使ったり、手と足を別々に動かす練習が多いので、いい刺激になっています」とのこと。教える内容はごく基本的なことが中心。「いい位置取りをして、いいバランスを保って、そこから体ごと捕りに行け。GKはスペシャルなポジションだから、技術、体力、ハンドボールの理解と、すべてにおいてチームのスペシャルであってほしい」と、パレツキコーチは語っていました。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

 ウルリックとアンテックに櫛田亮介コーチ(三重)の3人が揃うと、輝きが違いますね。天の川のようなきらめきで、おりひめジャパンを勝利に導いてくれることでしょう。

おりひめジャパン
おりひめジャパン

女子のアジア選手権は11月30日から熊本で開催されます。予選ラウンド最終日(12月5日)のカザフスタン戦に勝って、A組1位で決勝トーナメントへ進出するのは最低条件。アジア大会で1点差で敗れた中国、アジアNO.1の韓国に勝って、目指すはアジアの頂点です。来年の世界選手権への出場権はすでに確定していますが、開催国のプライドを結果で示してほしいところです。

 第17回女子アジア選手権の公式HPはこちら。
https://japanhandball2019.com/asian-championship-2018/

久保弘毅

この選手が凄い! その7 河田知美(北國銀行)

この選手が凄い! その7

河田知美
河田知美

河田知美(北國銀行)
【小さくても点が取れる】
 小柄な点取り屋として、学生時代から評判だった。北國銀行に入ってからも本職の左バックだけでなく、左サイドでも得点を重ね、中心選手になった。カットインができて、ロングも打てて、2対2の理屈がわかっているから横にずらしたり、ポストを見ながらプレーできる。攻撃に関しては非の打ちどころがない。
アンダーサイズな点取り屋は、上のカテゴリーでセンターに回されがちだが、荷川取義浩監督にエースで育ててもらえたのは、河田にとって幸運だった。荷川取監督は「河田は技を持っている」と言い、河田を効果的に起用している。DFでのサイズ不足を補完してくれる大型サイドの田邉夕貴が隣にいたこともよかった。かつての横嶋かおるなど、荷川取監督は、小柄でもハンドボールを分かっている選手を抜擢するのが上手い。

【サイズ不足を補う工夫】
 身長160cm(公称)だが、9mの外からロングシュートを決め切れる。得意技は落ち際で放つロング。小さいから最高到達点で打とうとするのではなく、そこから落ちてきたタイミングでコースに打ち分ける。DFも落ちてきているタイミングだから、シュートブロックに引っかからない。どういうタイミングでジャンプして、どのようにして滞空時間を保っているのかはわからないが、「1人時間差攻撃」のようなズレを生み出す。
 また7mスローを担当する際には、7mのラインより少し下がって、シュートコースを確保する。「私みたいな小さい人間は、国内からそういった工夫をしないと生き残れません」とのこと。その工夫は国際大会でも役に立っている。河田が7mスローを打つ時は、立ち位置に注目を。

【素敵な僧帽筋】
 小さくても投球動作がしっかりしている河田は、シュートフォームが美しい。両ヒジが少し背中側に入った、羽ばたくようなテークバックから、強いシュートを打ち込む。野球の投手で言えば東明大貴(オリックス)のような、質のいい真っすぐが投げられるフォーム。肩甲骨周辺の柔らかさはリーグ屈指。柔らかさだけなら山野由美子(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)もいるが、柔らかさと強さの両方となると、河田が一番だろう。
 強さの源は、しっかりと発達した僧帽筋。小顔だから余計に、首から肩にかけての筋肉が目立つ。日本のフィジカルに優れた女子選手で結成しているGGS(ゴリゴリしスターズ)の一員。当初は「筋肉不足」と入会を見送られていたが、素晴らしい僧帽筋が認められ、晴れてメンバー入りを果たした。

久保弘毅

この選手が凄い! その8 髙宮咲(HC名古屋)

この選手が凄い! その8

髙宮咲
髙宮咲

髙宮咲(HC名古屋)
【天性のリーダーシップ】
 HC名古屋はここ2年ほどで強くなった。若くて戦術眼に優れた新井翔太ヘッドコーチがチームを立て直し、いい新人が入るようになった。若くて勢いのあるチームをまとめているのが、4年目の髙宮。1年目からリーダーシップを発揮し、髙宮を慕ってセンターの笠原有紗ら好素材が名古屋に集まり出した。
 以前の名古屋は、まじめで人柄のいい選手が集まっていたが、リーダータイプの人間がいなかった。そこに髙宮が入り、また髙宮の同期にDFの要の水谷百香がいたことで、チームの柱ができた。チームが強くなる過程では、こういう髙宮のような求心力を持った選手が必要不可欠。かつて弱かった三重バイオレットアイリスも、漆畑美沙というリーダーがいたことで、力のある後輩が集まり、櫛田亮介監督体制で花開いた。HC名古屋も髙宮を中心にまとまれば、初のプレーオフへの道が開けるだろう。

【2ポジションで役に立つ】
 右サイドが本職ではあるが、新井ヘッドが就任してからは右バックでの起用が増えている。インに回り込んでのミドルに、器用なパスさばきなど、左利きの利点を生かしてセットOFをスムーズにしている。
 現役時代センターだった新井ヘッドは、ゲームメイカーにこだわりを持っている。チーム内には絶対的な司令塔・笠原がいるが、新井ヘッドは「最もセンターらしい性格をしているのは髙宮」と言い、右バックに置くことで髙宮の冷静、視野の広さを引き出している。新井ヘッドはまた「デシジョンメイカー(意思決定者)は必ずしもセンターである必要はない」とも言っている。突破力がありながら時に熱くなりがちなセンターの笠原を、先輩の髙宮がフォローし、判断の手助けをするのが理想の形。今シーズンは笠原も突発的なパスミスがかなり減り、司令塔として1つレベルが上がってきた。その裏には、冷静にチーム全体を見られる髙宮の存在があると思われる。
 
【HC名古屋に久々に登場した代表選手】
 リーグでの活躍が認められ、髙宮は今年から日本代表に呼ばれるようになった。HC名古屋から代表選手が出たのは久しぶりのこと。記憶に残っている範囲では、2007年前後に佐藤由紀恵が代表合宿に参加して以来か。
 出身地の群馬での代表戦にこそ出場できなかったが、その後のトライアルゲームに出場し、代表活動で得た刺激をチームに還元している。ちなみに新井ヘッドも女子ジュニア(U-20)日本代表のコーチに呼ばれている。HC名古屋と世界との接点が増えてきたのはいい傾向。

【追記】残念ながら10月下旬の試合でヒザを痛めて、長期離脱の見通し。初のプレーオフ進出を目指していたHC名古屋にとっては大きな痛手だが、髙宮はコート外からも積極的に声をかけている。視野が広くて、フォアザチームの意識が徹底している選手。たとえコートに立てなくても、チームにいい影響を及ぼしてくれるに違いない。

髙宮咲選手は今シーズンのmelis契約選手です。

久保弘毅

この選手が凄い! その6 横嶋彩(北國銀行)

この選手が凄い! その6

横嶋彩
横嶋彩

横嶋彩(北國銀行)
【点が取れるセンター】
 ハンドボールが上手な横嶋一族の中で、もっともシュート力のある選手。正統派のゲームメイカータイプではないが、自分が打つことで周りを活かせる。小さくてもタイミングを微妙に外したミドルシュートがよく決まり、DFが2人寄ったら周りにパス。セットOFを組み立てるというより、「寄ればパス、寄らなきゃ打つ」の大原則に忠実なプレースタイルで、好調時は1試合で10点を取ってくれる。
 以前は国際大会で思うように打てずに悩んでいたが、近年は国内と国外でプレースタイルを上手に使い分けられるようになった。代表の試合では我慢強くボールを回し続けて、相手がずれた一瞬の隙を狙って得点もしくは7mスローに結びつける。打つことでリズムを取る国内仕様のゲーム運びとは、ひと味違ったスタイルを確立した。

【ゴリゴリのカットイン】
 ミドルシュートとともに武器になっているのが、力強いカットイン。筋肉質の身体で間を強く割っていく。時にはゲームメイクを他の選手に任せて、大きめのバックステップから一直線にゴールに飛び込む。海外の大型ディフェンダーも捕まえられないスピードは、逆ミスマッチそのもの。
 フィジカル強化に意欲的で、多田仁美と森本方乃香(ともに三重)が立ち上げた筋肉ユニット「ゴリゴリシスターズ(略称GGS)」にいち早く賛同し、石川支部に就任した。ハンドボール界で話題になったゴリゴリTシャツをデザインしたのも彼女。多田の誕生日プレゼントに描いたゴリラの絵が、元になっている。
 素晴らしい筋肉をOFのみに活用していたが、近年はDFも上達し、代表では2枚目のDFに入る時間帯も出てきた。横嶋彩がDFに入ると、速攻での展開がスムーズになる。速攻のパス出しの起点になるだけでなく、2次速攻で勢いに乗って間を割るなど、得点のバリエーションが増える。
【ハンドボール一家のDNA】
 富山県では有名なハンドボール一家に生まれた。姉の横嶋かおる(元北國銀行ほか)は、スペースとルーズボールの嗅覚が抜群の名ポスト。日本リーグのシュート率の記録保持者(2015年度に90.6%)でもある。
妹の横嶋遙(アランマーレ)は、センターとポストの両方ができる万能選手。攻撃の表と裏を理解しているので、いいシューターが一枚いれば、より活きてくる。
クレバーさを売りにしている2人と比べると、横嶋彩は豪快さが目立つ。とはいえ横嶋家のDNAを引き継いでいるので、プレーに遊びがあり、それでいて勝負強い。北國銀行でも日本代表でも、姉のかおるがつけていた背番号9を引き継いでいる。

久保弘毅

この選手が凄い! その5 田口舞(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)

この選手が凄い! その5

田口舞(飛騨高山ブラックブルズ岐阜)

田口舞
田口舞

【下のボールに強い】
 日本リーグのGKでは小柄な部類に入る。ハイコーナーが苦手なのは、誰もが知っている。田口自身もハイコーナーにナーバスになっていた時期があった。しかし今は割り切りを覚えて、最大の長所である「下のボールへの強さ」で迷いなく勝負できている。対戦相手も「田口は下が強い」とわかっているはずなのに、ついつい下に打ってしまう。
 スライディングの巧さはリーグ屈指で、ギリギリのコースに身体ごと投げ出し、シュートを防ぐ。足だけでなく、身体ごとボールに近づいていく動きは、中高生のいいお手本。カカトから無理なく滑って、最後まで面を崩さない。

【柔らかさと俊敏性の両立】
 スライディングが上手なのは、柔軟性があるから。いつも講習会では柔軟体操の見本を見せて、中高生を驚かせる。180度開脚したまま、上体を床にペタンと着けられるくらい、股関節が柔らかい。その気になれば、頭よりも高い位置につま先を振り上げることもできる。
 ぐにゃぐにゃと柔らかいだけでなく、股関節からスパッと腿を引き上げることができる。
股関節の瞬発力は、ラダートレーニングで鍛えてきた。細かい足さばきを早く正確に繰り返すことで、細かいステップからのダイナミックな動きにつなげてきた。さらには「GKは手と足と別々の動きが求められるから」と、ラダーをしながら手で物を扱う独自のトレーニングを開発している。

【人柄のよさ】
 教え上手で面倒見がいいから、講習会ではいつも人気者。しっかりと言葉で説明できる聡明さがある。ファンへの対応も親切丁寧。根本に、人に対する優しさが感じられる。
 ハンドボールの世界では「GKは変わり者が多い」と言われるが、いたってノーマルな常識人。あえて言うなら「性格がよすぎて変わり者」のタイプなのかも。同じ系列では飛田季実子(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング)、高森妙子(広島メイプルレッズGKコーチ)などがいる。
得点力不足のチームでも、気持ちを切らすことなく、同じGKの菊池麻美とタッグを組みながら、チームを勝利に導く。速攻の得点源だった比嘉桃子が引退したので、新たなホットラインも構築したい。田口が止めて、比嘉桃が走って1点のような、みんなが盛り上がれるパターンを作れるか。

田口舞選手は今シーズンのmelis契約選手です。

久保弘毅

この選手が凄い! その4 松信亮平(琉球コラソン)

この選手が凄い! その4

松信亮平(琉球コラソン)

松信亮平
松信亮平

【DFで頑張る】
 自他ともに認めるハードワーカー。飛び抜けたセンスはないものの、地道に汗をかいてチームに貢献する。OF志向の強い選手が集まった琉球コラソンの中では貴重な存在。細かいところに意識が行き届く名嘉真吾、ひたすら運動量で勝負する中村彰吾とともにDFを支える。労を惜しまないタイプゆえに、たまに余計な退場をもらったりもするが、松信が真ん中にいれくれないと、コラソンのDFが成り立たない。

【ルーズボールへの反応】
 ルーズボール、リバウンドなど、こぼれ球への反応がいい。松信自身が最もこだわっている部分でもある。床に転がったボールに素早く飛びつき、マイボールにする。
 実家が畜産業を営んでいることもあり、子供の頃から豚と育った。プレースタイルはまさに「泥臭いこと豚の如し」。イメージ以上に筋肉質で賢いあたりも豚に似ているか。
 速攻で走れる脚力があり、地肩は強いが、シュートがやや単調だったりもする。シュート確率は長年の課題ではあるが、守りから速攻に転じる場面で、松信の働きは欠かせない。東長濱秀作監督は、松信のような「水を運ぶ人」を大切にしている。

【スポーツショップの店員としても優秀】
 普段はスーパースポーツゼビオの宜野湾店で働いている。丁寧な接客で、店の売り上げに貢献しているという。ハンドボールシューズだけに限らず、シューズ全般に詳しく、細かい相談にも応じてくれる。軽さや履き心地から始まり、カカトのところに自分の番号を入れるなど、シューズ選びの楽しみ方をよく知っている。
 最近はハンドボール用品売り場をじわじわと拡張しているとのこと。松信が沖縄でプレーしている現役ハンドボール選手であることも、徐々に知られるようになった。コラソンの選手と一緒にシューズを選んだ思い出は、ハンドボールを始めた子供にとって大きな励みになるはず。ホームゲームと売り場の両方で、松信はハンドボールの未来を支えている。

松信亮平選手は今シーズンのmelis契約選手です。

久保弘毅

この選手が凄い! その3 藤本純季(トヨタ車体)

この選手が凄い! その3

藤本純季
藤本純季

藤本純季(トヨタ車体)

【よく声が出る】
 いくつになっても元気で、ハンドボールが大好き。いつも声を出しながら、楽しそうにプレーしている。最大の見せ場は点を取った後。シュートを決めて、叫びながら自陣に戻ってくる時の声がいい。高めの声で叫んでいるのだが、何を言っているかはよくわからない。トヨタ車体の先輩・門山哲也のような「雄叫び」ともまた違う。でも楽しそうだし、チームが盛り上がるから、それでOK。技術、体力を積み重ねて、そろそろベテランと呼ばれる年齢になってきたが、いつまでも若々しいフジモンでいてほしい。

【腕の振りが柔らかい】
 技術的な売りは、腕の振りの柔らかさ。球持ちがいいので、7mスローを任されている。フィジカル軍団トヨタ車体でビルドアップしながら、強さと柔らかさを両立させている。7mスローでは、オーソドックスな駆け引きで勝負。シュートのバリエーションが豊富な選手なので、もう少し遊びを増やしてもいいのでは? 大事な場面で任されることが多いので、今年こそは藤本が7mスローを決めて日本一に。1点差に泣いてきた歴史に終止符を打てるか。
 左サイドのポジションを争う杉岡尚樹と、腕の使い方の違いを見るのも面白い。特にループシュートでは、2人の違いが明確に出てくる。藤本は柔らかく腕をしならせて、脱力するタイプ。杉岡は内ひねりを強調して、腕をつき出すように打つタイプ。柔らかい軌道の藤本と、高く上がって急激に落下する杉岡との、ループの軌道の違いも見どころになる。

【意識が高い】
 試合中は味方や審判と、こまめに会話している。ファンや報道陣にも気さくに接してくれる。話はわかりやすく、ネガティブな感情を表に出さない。だから藤本の周りには人が集まる。
 昔はお調子者っぽいところもあったが、先輩たちの姿を見て学び、言葉にも深みが増してきた。迷った時に「一歩前へ」踏み出す姿勢がいい。講習会やチャリティーにも積極的で、事あるごとに「現役の選手が、今のハンドボール界をよくしていこう」と発信する姿は、尊敬に値する。
 現状への不平不満よりも、明るい未来のために、今の自分に何ができるか――こういう思いを持った選手が、次の世代へバトンをつないでいくことで、日本のハンドボール界は前進していくのだろう。

藤本純季選手は今シーズンのmelis契約選手です。

久保弘毅

チームの見どころ2018 【広島メイプルレッズ】昨年度女子準優勝

チームの見どころ

【広島メイプルレッズ】昨年度女子準優勝

【チームの戦い】
3年間チームを率いた金明恵監督が、男子のトヨタ紡織九州の監督になった。代わりに初めて女子を指導する中山剛監督が就任した。監督が変わり、メンバーも大幅に入れ替わって臨む1年になる。2位から優勝を狙うための陣容刷新ではなく、色々と未知数な部分が多いのが正直なところ。中山監督が就任して間もない5月の社会人選手権は完全に「手探り」だったが、9月の国体では決勝に進出するなど、リーグ開幕へ向けて状態は上向き。まずは上位4つに入って、プレーオフ出場を。今年のメンバーで四強に入れば、大きな自信になる。

【予想布陣】
LW:石川(石田)
LB:三田(木村)
CB:木村(眞継)
RB:眞継(門谷)
RW:門谷(三橋)
PV:角屋(堀川、近藤)
GK:板野(中村)

6:0DF

 得点王の李美京、ポストでリーグ最高の攻撃力を誇った高山の2人がいなくなった。攻撃のホットラインがなくなったと言われる一方で、2人だけで独占していたボールをチーム全体でシェアできると見る向きもある。チーム唯一の左利き・キャプテンの門谷を右バックで使うか、本来の右サイドで使うかも含めて、最適の布陣が決まるのはシーズンが深まってからになりそう。
 得点力不足が懸念されるので、これまで以上にDFに活路を見出だしたい。日本代表で研鑽を積むGK板野がいて、真ん中の角屋、堀川にはサイズがある。石川と門谷の両2枚目は運動量が豊富で、サイズ以上の存在感を示す。GK板野のスローイングがよくなれば、守って速攻で楽に得点できる機会が増える。

【人事往来】
IN
三橋(東京女子体育大)
木村(大阪体育大)
近藤(大阪体育大)
狩野(大阪教育大)
井内(岩国商)
田渕(華陵)
OUT
高森(コーチ専任に)
高山(引退)
李美京(未定)
村田(引退)
國廣(引退)

 三橋、木村、近藤の3人には即戦力の期待がかかる。三橋は佼成女子、東京体育大でキャプテンを務めたカリスマ性のある選手。小さくても気の利くDFで、チームを鼓舞する。近い将来のリーダー候補としても期待が大きい。木村は大学時代こそケガに泣かされたが、攻撃力は一級品。センターもしくは左バックで、開幕から出場時間をもらえそう。近藤は小さなポストだが「ハンドボールを分かっている」と、首脳陣の評価が高い。

【指揮官】

中山監督
中山監督

中山剛監督
 広島のハンドボール界の顔とも言うべき存在。湧永製薬のエースであり、日本代表のエースだった。引退後は湧永の監督を二度務め、代表のコーチ経験もある。これまでずっと男子を見てきたので、女子の指導は初めて。漢気の人で、余計な口出しはせずに、選手を見守るのが特徴だったが、メイプルの監督になってからはこまめに声をかけているという。湧永出身者らしく、フリーOFにこだわりを持つ。約30年間変わらないリーゼントと、黒いスーツでビシッと決める姿は、一度見たら忘れられない。

【キープレーヤー】

門谷
門谷

門谷舞
 ハンドボールへの取り組みのよさは、以前から高い評価を受けていた。入社5年目の今年から、満を持してキャプテンに。右サイドでも2枚目が守れて、攻守に体を張れるのが持ち味。日本代表には縁がないが、代表クラスの実力を有する。
 60分間コートに立ち続けて、攻守両面でチームにプラスをもたらす選手なのだが、5月の社会人選手権では、これまで決めていたはずの決勝シュートを外してしまうなど、ちょっと気負っているようにも見えた。キャプテンでバックプレーヤーも兼ねてと、これまで以上に背負うものが増えたのが原因か。しかしクレバーな選手なので、自分の役割を整理できれば、本来の勝負強さを取り戻すだろう。1試合10点を取るタイプではないが、勝負の節目に必ず絡んでくる。

【この技を見よ!】

石川
石川

・石川紗衣のDF
1枚目を守っている時は、ごく普通の新人選手だった。ところがシーズン途中から2枚目を守るようになって、頭角を表わした。嫌らしい位置に立ち、こまめに牽制を入れてくる。1人で2人を守れる勘のよさで、チームに欠かせない戦力となった。
2枚目DFの原点は、大分鶴崎高時代にさかのぼる。梶原健監督が「俺は信頼しているヤツにしか2枚目を任せない」と言って、石川に2枚目DFの技術を教えたという。左サイドの石川、右サイドの門谷の2人ともが2枚目を守れるDF力があるのは、メイプルのストロングポイント。他のチームにはない、大きな武器である。

広島メイプルレッズは2018年度、Kempaのユニフォームで戦います。

久保弘毅

チームの見どころ2018 【大同特殊鋼】昨年度日本リーグ男子3位

チームの見どころ

【大同特殊鋼】昨年度日本リーグ男子3位

【チームの戦い】
 昨年は東江と朴重奎の2対2に頼りっぱなしだったが、シーズン途中に韓国から尹時烈が加わりパワーアップ。プレーオフでは1勝のみに終わったが、短期決戦に強い大同の雰囲気が戻ってきた。伝統のチームワークと堅いDFをベースに、得点のバリエーションが増えれば、タイトル奪還も現実味を帯びてくる。

【予想布陣】
LW:久保龍(千々波、石橋、吉田)
LB:尹時烈(東江)
CB:東江(藤江、原田)
RB:池辺(斎藤)
RW:平子(杉本)
PV:朴重奎(加藤、伊藤、瀧澤)
GK:久保侑(田中、友兼)

5:1DF

 伝統の5:1DFは、そろそろ「次」を用意しておきたいところ。トップの千々波が元気なうちに、リーチの長い後継者を作っておきたい。長身の吉田が候補になるか。フルバックも朴重奎がいるが、攻守の切り替えが遅くなると、大同の十八番である「堅守速攻」が出せなくなる。5月の社会人選手権では、朴重奎がケガした時間帯にフルバック千々波で乗り切った。トヨタ紡織九州のような走り勝ちたいチームが相手なら、フルバックに千々波を置いたスモールラインアップが効果的かもしれない。
 攻撃では左腕・池辺が一本立ちできるかどうかがポイント。尹時烈、東江、藤江の右利き3枚でバックプレーヤーをやっても悪くはないが、池辺が右バックに入った方が攻守にバランスが整う。尹時烈が昨年以上にフィットすれば、東江がより「打てるゲームメイカー」として機能する。相手がプレスDFを仕掛けてくれば、4人目のバックプレーヤー藤江が、広いスペースを切り崩してくれる。

【人事往来】
IN
友兼(日本体育大)
斎藤(国士舘大)
OUT
野村(引退)
東(引退)
上原(引退)

 左利きとGKが抜けて、そのポジションを新人で補強した。勝負強かった野村の穴は、そう簡単には埋まらない。左利きで、決して器用ではないけどしぶとく、チームのために汗を流せる男だった。タイトルのかかった試合では、必ずと言っていいほどクロスからのロングを決めて、チームを救ってきた。野村と同じ役割を、いきなり新人の斎藤に求められないが、池辺と2人で右バックのポジションを埋めていけたら。
 GK兼コーチだった東も、勝負強さと雄叫びで、長年チームを支えてきた。友兼は東よりもさらに小柄だが、瞬発力があって、学生時代からキャリアを積んできたGK。メインの久保侑が当たらない日に、短時間でインパクトを残してくれると、チームも盛り上がる。

【指揮官】
岸川英誉監督

岸川監督
岸川監督

 玄人好みなマルチプレーヤーだった現役時代と同様、監督になってからも丁寧にチームを作っている。地道にベンチメンバーを強化し、藤江や伊藤らを効果的に使う采配は、見ていて面白い。今年は首の大ケガから復帰したキャプテン・加藤をどう起用するかが見もの。選手の持ち場を上手に作り、信頼してコートに送り出すなど、モチベーターとしても優秀。「短期決戦に強い大同」の雰囲気を取り戻しつつある今シーズンは、日本選手権とプレーオフの2冠奪還を目指す。

【キープレーヤー】
加藤嵩士

加藤
加藤

 本当なら日本代表の正ポストになっていたはずの人物。人柄がよく、意識も高く、当たり負けない強さがある。まさに頼れる大男だったのだが、昨年は頸椎のケガで丸一年を棒に振った。加藤がいなかったから、朴重奎がフル出場せざるをえなくなり、昨年は攻守の切り替えが鈍くなった。加藤が元気なら、朴重奎もフレッシュな状態でコートに立てて、相乗効果が見込める。
 まだ無理は禁物だが、いずれはポストの得点力不足に泣いている日本代表にも復帰してほしい選手。がっちりと位置を取ることもできれば、ライン際で意外な器用さを見せることもある。根っからのリーダータイプではないが、内定選手時代から「強い大同」を肌で感じながら育ってきた。一体感と勝利のメンタリティを次世代に伝える。

【この技を見よ!】
・東江雄斗の美しいハンドボール

東江
東江

 昨年12月に韓国代表の尹時烈がチームに加わった時に、最も喜んでいたのが東江だった。「尹時烈、朴重奎で2対2をやれば、黙っていてもDFが寄ります。そうすると僕の使えるスペースが広くなるから、楽ですよね」。シーズン前半は朴重奎との2対2でしか点が取れずに苦労していた。狭いスペースを無理やりドリブルで抜けていたのが、今では広いスペースで無理なく勝負できる。理にかなったプレーがしたい東江にとって、最適環境が整った。
 スペースを理解して、オーソドックスなプレーを選択するのが、センター東江の基本スタイル。それでいて勝負の際には沖縄独特のトリッキーな飛び道具も用意されている。勝負どころでの左手のシュートは「自然と出た」もの。最初から「やってやろう」と色気を出すのではなく、とっさの場面での選択肢が人よりも豊富で、なおかつ魅せるレパートリーが最後まで残っている。スペースと位置取りをより深く理解して、世界でも通用する「打てるセンター」に育ってほしい。

大同特殊鋼は2018年度、Kempaのユニフォームで戦います。