ハンドボール日本代表紹介 #81 石立真悠子(三重バイオレットアイリス)

石立真悠子
石立真悠子

#81 石立真悠子(三重バイオレットアイリス)

・経験豊富な司令塔
 1対1という強烈な武器があり、なおかつゲームの起承転結を描ける頭脳の持ち主。「勝利のシナリオ」を書かせたら国内最高のゲームメイカーが、女子日本代表に復帰した。2015年のリオ五輪予選でベンチ入りした田中美音子(大阪)のような「レジェンド枠」で、若いメンバーを後方支援する。

 かつては正センター(CB)で、試合の流れを作っていた。今回求められるのは、途中出場で流れを変える役目。賢い選手だから、自分の役目を理解して、コート上で表現してくれるだろう。理にかなったセットOFでプラス1(1人余った状況)を作り出す。ルーズボールに飛びついて、チームの士気を高める。小松市立高仕込みの1対1では、頭の重さを利用して切り返し、古武術のような動きで相手の横をすり抜ける。周りを生かす「攻撃のストーリー」を持ちながら、個で勝負できる「一芸」も兼備する。こういうベテランが短時間で仕事をする国は強い。

 栗山雅倫前監督時代は「OFに専念させる」使い方が多かったが、攻守両方で使った方が動きにリズムが出る。2枚目DFに入り、豊富な運動量で仕掛けていけるのが強みであり、DFで足が動くと、OFも乗ってくる。ウルリック・キルケリー監督は「センターは左の1枚目に入れる」を基本フォーマットにしているが、世界選手権では石立をどこに置くか。ヒザのケガの回復具合にもよるが、2枚目で動く石立を見てみたいし、その方が石立の良さが引き出されるし、チームにも勢いが出ると思われる。

 理路整然とした話ぶりで、ミックスゾーンでは人気者。コメントがそのまま使えて、ゲームの流れが良くわかるから、本当にありがたい。判定に対してもネガティブな感情をぶつけることなく、意味深な笑顔で揺さぶりをかける。すべてにおいて「駆け引き」をわかっているベテラン。世界の一流選手と同様、美しさと泥臭さとしたたかさで、ハンドボールファンを魅了する。

久保弘毅