「ハンドボール全般」カテゴリーアーカイブ

今週末はプレーオフ(ハンドボール)-2

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男子第一試合、大崎電気×大同特殊鋼

日本代表を数多く抱える大崎電気は文字通りのタレント軍団。今季は代表選手が不在の間に、夏山、時村、馬場、ルーキーの柴山らが力をつけ、さらに選手層が厚くなりました。普段どおりの力を発揮できれば、間違いなく優勝候補筆頭なのですが、ことプレーオフに限ると「よそ行き」のプレーに終始して、なかなか勝てません。

 

勝つためにはセットオフェンスが単調にならないことも大事ですが、まずはディフェンスから。いい時の大崎は密集を作れています。悪い時はそれぞれが孤立してしまうので、いかにディフェンスで一体感を作れるか。ディフェンスラインを裏から支える、GK木村の声かけがカギを握ります。日本代表でもオルテガ監督の特殊なシステム(クロスアタックを多用し、2対2を作らせないシステム)を理解し、試合中にこまめに声をかけながらディフェンスを修正し、株を上げました。また馬場をトップに据える変則の5:1DFや、夏山、時村といった守備で体を張れる選手が、流れを変えるキーマンになりそうです。

 

大同特殊鋼はプレーオフに限っては特別な強さを誇ります。レギュラーシーズンはふらふらしていても、プレーオフになると見違えるような一体感を発揮し、接戦をものにしています。震災でプレーオフが中止になった2011年をはさんで、プレーオフでは足かけ10年負けがありません。

 

今季はシーズン途中に元韓国代表の名ポスト・朴重奎が加わり、さらには内定選手で大学NO.1のバックプレーヤー東江が入りました。この2人が加入したことで、シーズン当初とはまったく別のチームになりました。朴重奎のライン際での強さは今もワールドクラス。ただ重くて強いだけでなく、体を波打たせるようにして相手の力をかわします。若手の成長株・藤江のスピードも必見。大同が勢いに乗る時は必ずと言っていいほど、藤江の速攻やカットインが決まります。あとは武田、千々波、岸川、野村ら勝ち方を知るベテランが勝負の節目に活躍すれば、いつもの大同の勝ちパターン。堅い5:1DFとGK久保(侑)の大当たりで、短期決戦で強さを発揮します。

今年も「最後に勝つのは大同」なのか。それとも大崎が歴史を変えるのか。4試合の中で最も注目度の高い対戦カードです。

久保弘毅

今週末はプレーオフ(ハンドボール)-1

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今週末はプレーオフ

 

・国内最高峰のタイトル

3月26、27日に日本リーグのプレーオフがあります。シーズンの締めくくりで、国内の四大大会(実業団選手権、国体、日本選手権、日本リーグ)の中でも最も権威のある大会です。このプレーオフのタイトルを獲るために、選手たちは1年間戦っています。

 

準決勝4試合の組み合わせを順に見ていきましょう。

 

・女子第一試合、北國銀行×広島メイプルレッズ

レギュラーシーズン全勝の北國銀行は、実業団選手権、国体、日本選手権も無敗で制しています。今季負けなしの北國が無傷で四冠を達成するかが、大きな見どころになります。日本代表の角南をケガで欠いてもなお選手層が厚く、様々な組み合わせで勝負できるのが強みです。一番の売りはGK寺田のライナースロー。八十島、鰍場の両サイドを走らせるだけでなく、時には真ん中にいるポストの横嶋(か)にも速攻のパスを通します。サッカーのサイドアタックと中央突破を使い分けるかのような、速攻でのロングフィードは必見です。

 

セットオフェンスでは、日本代表で活躍した横嶋姉妹の「縦の2対2」が軸になります。妹の横嶋(彩)がセンターで自由奔放に動き回り、姉の横嶋(か)がポストで合わせるコンビネーションは、まさに阿吽の呼吸。特に横嶋(か)は史上初の9割を越えるシュート率を記録しました。勝負どころでは必ずと言っていいほど得点に絡んでくるので、ライン際で動き回る横嶋(か)からは目が離せません。

 

対する広島メイプルレッズはレギュラーシーズン最終戦の飛騨高山ブラックブルズ岐阜戦に勝って、最後のひと枠に滑り込みました。急激な若返りを図った影響もあり、不安定な戦いが続いていましたが、両サイドとポストはしっかりしています。左サイドの松村は日本代表の左サイドでもあり、肩が外れたような独特のシュートフォームが持ち味です。右サイドの門谷は貴重な守れる左利き。高山は攻撃力だけに限定すれば国内NO.1のポストです。ライン際で高山をどれだけ生かせるか。高山がバックプレーヤーに回る時間帯もありますが、できればポストに専念させたいところです。

 

守りではGK毛利の阻止率に注目です。最終戦では阻止率8割という、信じられないような数字を残しました。ノーマークへの反応がよく、大胆なキーピングで会場を沸かせます。第一試合の最大の見どころは「8割止めるGK毛利VS9割決める横嶋(か)」と言ってもいいでしょう。北國優位は間違いありませんが、広島はGK毛利の大爆発があれば、大逆転の可能性も出てきます。

 

久保弘毅

ハンドボール女子の世界最終予選は3月18日から

・オランダ、フランス、チュニジアとの戦い
 リオ五輪の出場権をかけて、日本代表女子は18日から世界最終予選を戦っています。オランダ、フランス、チュニジアとの4ヶ国で総当たりのリーグ戦を行い、上位2ヶ国がリオ五輪に出場します。

 日本の初戦の相手はチュニジア。昨年12月の世界選手権では快勝している相手です。この時は日本のオープンディフェンスが機能して、守って速攻に持ち込めました。しかし油断は禁物。勢いに乗ると怖いチームなので、相手に流れを渡さないよう、守り勝つことが大事になってきます。

 2戦目の相手は世界選手権銀メダルのオランダ。年齢的にも脂の乗ったメンバーが、組織的に得点を重ねてくる印象があります。セットオフェンスが粘り強いので、そう簡単には崩れません。日本の苦戦が予想されますが、2勝1敗の三つ巴になって得失点差で順位が決まる可能性もあるので、なるべくロースコアに持ち込みたいところです。

 最終戦は開催地フランスとの対戦。世界選手権では7位に終わりましたが、本来であればメダル級の実力を持っている国です。好不調の波が激しく、はまった時の爆発力は鮮やかだけど、セットオフェンスが淡泊になって得点が停滞する時もあります。日本が得意のオープンディフェンスで圧力をかけて、バックプレーヤーの単発のシュートに持ち込めば、勝機はあります。

 日本の女子にとってフランスは、目の前に立ちはだかる大きな壁。2012年の世界最終予選でも対戦しましたし、2013年の世界選手権でも対戦しています。今回の組み合わせが決まった時も、選手から「またフランスと?」といった声も聞かれました。ちなみに2013年の世界選手権では、後半途中まで接戦を演じながら、守りの要・永田しおり(オムロン)が3度目の退場で失格になった影響もあり、終盤に10連続失点を許してしまいました。後半の苦しい時間帯を退場者なしで守りきれるかが、ポイントになるでしょう。

 40年ぶりの五輪出場へ向けて、最後の戦いに挑むおりひめジャパンに、熱い声援をお願いします。

久保弘毅
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ハンドボールの魅力 - 3:2:1DF

3:2:1DF
       
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ピラミッド状に人を配置したディフェンスシステムです。5:1DFよりも2枚目(両45度)が前に出て、相手のエースに圧力をかけます。上手くはまればパスカットから速攻を量産できるシステムですが、運動量が必要になります。また連携を作り上げるのに時間がかかるので、単純に「3:2:1DFにすれば、速攻が増える」とは言い切れません。

相手に圧力をかけられる反面、相手にスペースを与えてしまうことにもなるので、ハイリスクハイリターンなシステムと言えるでしょう。1対1の勝負に負けると、簡単に間を割られてしまいます。スペースが広いので、サイドシュートやポストシュートを打たれるリスクも大きくなります。6:0DFよりもノーマークになる可能性が高いので、ノーマークに強いGKが必要になってきます。

一般的に3:2:1DFの攻略方法は「ダブルポストになった瞬間」だと言われています。誰かが切ってダブルポストになると、2人目のポストを誰が見るかが曖昧になるからです。その弱点に対応するために、ダブルポストになった時はトップがライン際に下がるバリエーションがあります。

選手の配置も見どころのひとつです。一般的にトップは大きくて運動量のある選手、両45度はエースキラーで身体接触を好む選手、後方にいるフルバックは大型で味方に指示を出せる選手が適役です。しかし速攻での走る距離を考えて、トップにポストの選手を置き、両45度をサイドの選手に任せる方法もあります。こうすると全員の走る距離が短くなるので、体力を消耗することなく攻守の切り替えができます。湧永製薬が3:2:1DFをする時は、ポストの選手をトップにしています。

3:2:1DFで有名なのは韓国代表です。男子も女子もここぞという場面で高い3:2:1DFで相手の足を封じ、速攻につなげてきました。韓国伝統のフットワークがあるから成り立つシステムとも言えるでしょう。日本ではトヨタ自動車東日本が3:2:1DFを得意としています。90年代後半の中村荷役の黄金期は、3:2:1DFからの速攻で他を寄せつけませんでした。

日本代表の名ディフェンダーだった永島英明(元大崎電気)は、3:2:1DFのフルバックをしていた時にこう言っていました。「3:2:1DFは隙の多いシステムだけど、味方を動かすことで相手からスペースが見えにくくなります。フルバックは味方を動かしながらスペースを消さないといけないので、頭が疲れますね」 フルバックの危機管理能力に注意しながら観戦できるようになれば、かなりの上級者です。
久保弘毅

ハンドボールの魅力 - 5:1DF - 2

・5+1DF
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トップが1人前にでるシステムでも少し変則的なものを、最近では5+1DFと呼んでいます。通常の5:1DFではトップが真ん中にいるのに対し、5+1DFではトップが相手のエースにマンツーマン気味についたり、左右に動き回ったりと、動きに自由度があります。「マンツーマンでエースについているようで、ついていないような」距離感で相手を惑わすのが最大の狙い。小さくても機動力があり、「1人で2人を守る」くらいのクレバーな選手がトップに適任です。

5+1DFのトップで代表的なのが、大崎電気の馬場佑貴です。流れを変えたいタイミングで出てきて、相手のパス回しを分断します。大崎の試合を見る時は、どの時間帯で馬場が出てくるかに着目するといいでしょう。大崎では他にも、ベテランの豊田賢治が5+1DFのトップに入る場合があります。これは元木博紀と2人同時にコートに立った場合の作戦だと思われます。豊田はパスカットがとても上手い選手ですし、自由に動くのを好みますが、味方の陰から飛び出したいタイプでもあるので、トップで動き回るよりは、サイドDF(1枚目)にいた方がよさを発揮します。

女子ではソニーセミコンダクタの本多恵が5+1DFのトップで有名です。6:0DFの右の2枚目から少しずつ前に出て、いつのまにか相手エースにマンツーマンでつくような変化を得意とし ています。オーソドックスな6:0DFが得意なオムロンも、勝連智恵をトップに置く5+1DFを用意しています。本多、勝連ともに判断能力に優れ、ハンド ボールIQが非常に高い選手です。

5+1DFではトップの選手の「つかず離れず」の距離感を楽しんでください。

ソニーセミコンダクタ 本多恵
ソニーセミコンダクタ 本多恵

久保弘毅

画像は手の球日記
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/handjpn/
より