ハンドボールの魅力 - 3:2:1DF

3:2:1DF
       
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ピラミッド状に人を配置したディフェンスシステムです。5:1DFよりも2枚目(両45度)が前に出て、相手のエースに圧力をかけます。上手くはまればパスカットから速攻を量産できるシステムですが、運動量が必要になります。また連携を作り上げるのに時間がかかるので、単純に「3:2:1DFにすれば、速攻が増える」とは言い切れません。

相手に圧力をかけられる反面、相手にスペースを与えてしまうことにもなるので、ハイリスクハイリターンなシステムと言えるでしょう。1対1の勝負に負けると、簡単に間を割られてしまいます。スペースが広いので、サイドシュートやポストシュートを打たれるリスクも大きくなります。6:0DFよりもノーマークになる可能性が高いので、ノーマークに強いGKが必要になってきます。

一般的に3:2:1DFの攻略方法は「ダブルポストになった瞬間」だと言われています。誰かが切ってダブルポストになると、2人目のポストを誰が見るかが曖昧になるからです。その弱点に対応するために、ダブルポストになった時はトップがライン際に下がるバリエーションがあります。

選手の配置も見どころのひとつです。一般的にトップは大きくて運動量のある選手、両45度はエースキラーで身体接触を好む選手、後方にいるフルバックは大型で味方に指示を出せる選手が適役です。しかし速攻での走る距離を考えて、トップにポストの選手を置き、両45度をサイドの選手に任せる方法もあります。こうすると全員の走る距離が短くなるので、体力を消耗することなく攻守の切り替えができます。湧永製薬が3:2:1DFをする時は、ポストの選手をトップにしています。

3:2:1DFで有名なのは韓国代表です。男子も女子もここぞという場面で高い3:2:1DFで相手の足を封じ、速攻につなげてきました。韓国伝統のフットワークがあるから成り立つシステムとも言えるでしょう。日本ではトヨタ自動車東日本が3:2:1DFを得意としています。90年代後半の中村荷役の黄金期は、3:2:1DFからの速攻で他を寄せつけませんでした。

日本代表の名ディフェンダーだった永島英明(元大崎電気)は、3:2:1DFのフルバックをしていた時にこう言っていました。「3:2:1DFは隙の多いシステムだけど、味方を動かすことで相手からスペースが見えにくくなります。フルバックは味方を動かしながらスペースを消さないといけないので、頭が疲れますね」 フルバックの危機管理能力に注意しながら観戦できるようになれば、かなりの上級者です。
久保弘毅

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