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チームの見どころ 【トヨタ紡織九州】昨年度男子8位

チームの見どころ

【トヨタ紡織九州】昨年度男子8位

【チームの戦い】
 元々はアラコ九州時代に元島邦彦監督が「小さい選手だけで勝つ」コンセプトを掲げ、韓国スタイルのハンドボールで力をつけてきたチーム。ところが急激な世代交代と大型化で、チームの色が不明瞭になり、ここ数年は低迷していた。今シーズンは金東喆ら韓国人選手を入れて、チームカラーも韓国スタイルに戻して原点回帰。まだ結果は出ていないものの、チームの文脈に合った軌道修正で、強いレッドトルネードの復活を目指す。

【予想布陣】
LW:梅本(藤本、上田)
LB:朴永吉(田中、八巻)
CB:金東喆(中本、津山)
RB:松浦(中畠)
RW:鈴木済(荒川)
PV:酒井(野田、田中)
GK:岩下(下野)

3:2:1DFと6:0DF

若くてそこそこ名の知れた選手がいるけど、コンセプトが感じられず、選手も勢いだけでプレーしていた。そんな寄せ集め状態から、今年は金東喆を司令塔に据え、チームカラーもヨーロッパ志向から韓国スタイルに戻し、チームに一本筋が通った。ヨーロッパスタイルと韓国スタイルのどちらがいい、悪いではなく、かつて紡織は韓国人の呉相民を軸に10年以上チームを作ってきた歴史がある。だから韓国スタイルへの原点回帰は間違っていない。ポストの酒井は和製朴重奎(大同特殊鋼)になれる可能性があるし、八巻はトップDFというはまり役を得て、伸びやかにプレーするようになった。
とはいえバックプレーヤーの決定力不足は相変わらずで、いつまでもベテラン左腕・中畠に頼らざるを得ない状況が続いていた。そんなタイミングで、2人目の韓国人選手・朴永吉を補強。エースポジションを任せられる選手が決まり、チームが一気に好転するか。GK岩下のアクロバティックなセーブ、キャプテンのGK下野の勝負強さ、ポストの酒井の重さなど、光るものを持った選手はいるので、韓国人2人が噛みあえば、年明け以降は台風の目になるかもしれない。

【人事往来】
IN
小峰(国士舘大)
美並(中部大)
朴永吉(韓国)

OUT
なし

 昨シーズン末に金東喆が入り、今シーズン途中から朴永吉も加わった。2人のコンビネーションが冴えてくれば、大型ポストの酒井をこれまで以上に活かせるだろう。金と朴でDFをへこませて、右バックの松浦がロングを打ち込むパターンも期待できる。
 新人ではGK小峰が地元の佐賀清和出身。佐賀のトップチームとも言うべき紡織での活躍に期待がかかる。

【指揮官】
石黒将之監督
 ドイツでのプレー経験があり、監督就任当初からヨーロッパ志向のハンドボールを打ち出していた。しかし大型化がうまくいかず、4年目の今シーズンは韓国スタイルに方向転換している。これまでの失敗を素直に認めたうえでのことだから、決して悪いことではない。クイックスタートだけに頼らず、ゲームデザインをもう少しはっきり示せるようになれば、勝ち星も増えるだろう。

【キープレーヤー】

岩下祐太
岩下祐太

岩下祐太
 見ていて楽しいGK。アクロバティックなセービングに攻撃的なスローイング、戻りながらでも正確に位置取りができるセンスなど、1つひとつのプレーに華がある。見栄えのするキーピングに安定感が加わり、昨シーズンはシュート阻止率0.387で、レギュラーシーズン1位に輝いた。
 非常に運動能力が高く、ゴールとベンチを行き来する瞬発力に、相手の7人攻撃の隙を突く直接ゴールなど、新ルールが求めるGK像に最も近い選手。世界で戦うには少々小柄(183cm)かもしれないが、技術だけでなく、精神的な成長も示して、日本代表に選ばれてほしい。

【この技を見よ!】

酒井翔一朗
酒井翔一朗

酒井翔一朗のフィジカル&メンタリティ
 見た目も体格も朴重奎(大同特殊鋼)に似てきた。ライン際での強さは群を抜く。しっかりと位置取りした時の強さは、日本の若いポストの中では一番では。
日本代表ではオルテガ監督、シグルドソン監督に代々可愛がられ、ギリギリのところでメンバー入りするしぶとさもある。「外国人監督には、声を出してなんぼ。大声を出してアピールするだけ」と笑っているが、気迫を前面に出すプレースタイルは仲間からも信頼されている。また日本代表の相川浩一ストレングスコーチにも積極的に質問するなど、体作りの取り組みも高く評価されている。
いつも朗らかで、人当たりのいい好青年。取材するたびに「これからさらに伸びていくんだろうな」と感じさせてくれる。素直な向上心が、彼の一番の武器かもしれない。

久保弘毅

チームの見どころ 【HC名古屋】昨年度女子6位

チームの見どころ

【HC名古屋】昨年度女子6位

【チームの戦い】
 昨シーズンは早々に連敗を止めると、3勝をあげて、新井ヘッドコーチ就任1年目で「最下位脱出」の公約を達成した。チームの雰囲気が劇的によくなり、選手の表情も明るくなった。昔からハンドボールスクールの指導など、地元に根差した活動を続けてきたチーム。勝つことで全員が報われ、好循環に乗りつつある。昨年で培われた一体感をベースに、今年は覇気を前面に押し出し、本気でプレーオフ初出場を目指す。

【予想布陣】
LW:安齋(木村)
LB:福井(丸山、綿引)
CB:笠原(多田)
RB:髙宮(水谷)
RW:水谷(馬場)
PV:吉田(竹内、中屋敷)
GK:瀧澤(白築)

6:0DFと5:1DF

 待望のゲームメイカー・笠原の加入で、チーム力が飛躍的に向上した。ここ10年ほど泣き所だったポジションに本格的なセンターが加入したことで、攻撃の意図が明確になった。とはいえ、笠原もたまに熱くなるので、今年は冷静な髙宮を右バックにして、判断力の部分を肩代わりさせている。
 DFでは水谷がチームの柱。昨シーズン終盤は水谷の負傷欠場から失速してしまった。水谷が年間通して健康であることが、上位進出の最低条件。竹内がケガから復帰すれば、5:1DFのオプションも使える。GKは遅咲きの瀧澤が27歳になってから正GKの座を獲得した。周りへの声かけ、スローイングなど、今年は捕ること以外の成長が著しい。

【人事往来】
IN
綿引(東京女子体育大)
飯島(東北福祉大)
多田(武庫川女子大)
白築(桐蔭横浜大)
OUT
戸塚(引退)
 かつての正GKで、新井体制の1年目にキャプテンを務めた戸塚が引退。キャプテンを降りると、チームに残らずに引退してしまうのが、HC名古屋の悪しき伝統でもある。キャプテンが燃え尽きてしまわないよう、チーム全体でサポートしてほしい。ちなみに今年のキャプテンはエースの福井。
 新人では経験豊富な司令塔の多田に期待がかかる。綿引はロングヒッターだが、女子球界有数のフィジカルを活かして、ポストでも起用される予定。

【指揮官】
新井翔太ヘッドコーチ
 愛知高、中京大を経て、ドイツ留学ののちにHC名古屋で指導者になった生粋の名古屋人。若くして、ハンドボールの本質をよく理解している。戦術理解の徹底だけでなく、チームのあり方、選手の立ち居振る舞いなど、細かい部分にも目を配り、万年最下位のチームを立て直した。就任2年目の今シーズンの公約は「プレーオフ出場」。いい戦いだけでは満足しない若き指揮官のもと、チームは大きく変わりつつある。

【キープレーヤー】
髙宮咲

髙宮咲
髙宮咲

 チームが強くなる時に、必ず求心力となる選手が出てくる。HC名古屋の場合は、髙宮が求心力となっている。髙宮を慕って、大阪教育大の後輩・笠原もHC名古屋を選んだという。先輩たちからの信頼も厚く、先頭に立ってチームの改革に取り組んでいる。こまめな情報発信からも、「HC名古屋をよくしていきたい」思いが感じられる。
 コート上でも攻撃の中心で、冷静に全体を見て判断できる。新井ヘッド曰く「センターではないけど、チームで一番センターらしい感覚を持った選手」。今シーズンは本職の右サイドではなく、右バックでの出場機会が増えているのも、髙宮の判断力に新井ヘッドが期待しているから。右バックを主戦場にするなら、インへ移動してのミドルだけでなく、アウトを割るプレーを増やしていきたい。

【この技を見よ!】
丸山紀子のシュート力

丸山紀子
丸山紀子

桐蔭横浜大時代はサイドシューターだったが、地肩の強さと運動能力を買われて、HC名古屋ではバックプレーヤーになった。不慣れなポジションに戸惑う日々が続いていたが、新井ヘッドに教わってコツをつかみ、男子顔負けの運動能力がシュートに反映されるようになった。豪快なミドルシュートに、新井ヘッド直伝のステップシュートが決まるようになり、「やっとハンドボールが楽しくなりました」。男子のような迫力のあるプレーで、チームに勢いをもたらす。ベンチからの得点源として貴重な存在。
コート外ではいい意味でのお調子者で、男子中学生のようなキャラクター。最近はハンドボールが上達し、「男子高校生にレベルアップしました」とのこと。

久保弘毅

チームの見どころ 【琉球コラソン】昨年度男子6位

チームの見どころ

【琉球コラソン】昨年度男子6位

【チームの戦い】
 長年司令塔を務めた水野裕紀が昨年から兼任監督になり、若返りに取り組んでいる。よくも悪くも、人の入れ替わりが激しいのがチームカラーで、今シーズンは大砲の趙顯章が移籍した。水野監督、村山、石田ら2008年リーグ加盟当初の一期生もベテランになり、次世代を担う生え抜きの育成が引き続きテーマになってくる。

【予想布陣】
LW:牧山(仲程、三村)
LB:石川(村山、棚原)
CB:村山(赤塚、水野、又吉)
RB:福田(村山、大和田)
RW:名嘉(浅井、中村)
PV:松信(伊計、連)
GK:内田(石田、田村)

6:0DF

 新人の仲程、浅井は決定力のある両サイドだが、まだDFに不安が残る。ベンチに近い側の時のみ出場して、DFでは牧山、名嘉が2枚目に入り、バランスを整えている。松信以外に真ん中を守れる人材がほしいところに、伊計が去年から台頭してきた。ここに大和田がもう1枚加われば、ローテーションが楽になる。以前にも増してOF型の選手が増えたため、かつてのコラソンの代名詞だった3:3DFは封印されている。
 攻撃陣ではバックプレーヤーの層の薄さが深刻。上手い選手は多いが、絶対的な決め手に欠ける。赤塚を左サイドに回せるくらいの余裕が出てくれば、四強に食い込めるのだが…。人手不足に悩んでいたタイミングで、元エース・棚原の復帰は朗報。

【人事往来】
IN
浅井(中京大)
仲程(東海大―デンマーク)
中川(朝日大)
東長濱(アドバイザーで復帰)
棚原(復帰)

OUT
趙顯章(豊田合成)

 左の大砲で、1年かけてチームになじませてきた趙が移籍した。真ん中を守れて、ロングが打てる趙の穴はとてつもなく大きい。台湾ルートで、趙に続く掘り出し物を補強できれば面白いが、若手を起用することも大事。新人では仲程、浅井の両サイドの決定力は、リーグでも通用している。
 チームの頭脳だった東長濱秀作が、今年からアドバイザーで復帰したのは嬉しいニュース。水野監督がコートに立った時に、ベンチワークを任せられる。また海外挑戦で宙に浮いていた棚原が復帰したのは大きい(10月21日の豊田合成戦から出場可能)。2年前はOFでの暴走が目立った棚原だが、東長濱アドバイザーなら棚原を制御できる。

【指揮官】
水野裕紀監督
 長年チームを率いてきた東長濱秀吉監督(東長濱秀作アドバイザーの父)に代わり、昨年から兼任で指揮を執る。選手との年齢も近く、毎日の練習をしっかりと見ることで、若手のモチベーションを高めてきた。チーム全体にハードワークを落とし込んでいるのも好印象。監督業が主とはいえ、スムーズなボール回しは健在。むしろ兼任になってからの方が、短時間で攻撃を立て直せているようにも見える。一時期ほど7人攻撃を使わなくなったが、勝負どころでは7人攻撃を仕掛けてくる。

【キープレーヤー】
福田丈

 右サイドのレギュラーだったが、趙が抜けた今年から右バックになった。元々が中部大インカレ優勝時の右バックで、本来のポジションに戻って「プレーしやすい」と喜んでいる。持ち味は視野の広いプレー。趙のようなロングの迫力は求められないが、コート全体が見えていて、正確にパスを配れる。シュートのバリエーションも豊富で、苦しい場面でのステップシュートはチームを救う武器になる。これまでの2年間とは異なる福田の魅力が、今年は見られるだろう。

【この技を見よ!】
・石川出のハードワーク

石川出
石川出

 大崎電気の時はスポットでしかコートに立てず、苦しんでいた。昨シーズンにコラソンに移籍してからは出場時間が増えて、攻守によさが出るようになった。自分のアピールだけにこだわるよりも、常にチームのことを考えてプレーした方が、石川の「らしさ」が出る。攻撃では常に前を狙いながら、周りを活かせる。守ってはハードワークで、味方を助ける。昨シーズンは特に、「DFでここまで身体を張るか!」というくらい、献身的なプレーが印象的だった。
打てて、守れて、勝負強くて、リーダーシップも発揮できる日体大時代のよさが、ようやく日本リーグでも見られるようになった。今年もフォア・ザ・チームのプレーでコラソンをリードしてくれるに違いない。年間通してチームの中心に置いておきたい選手なので、ケガには気をつけて。

久保弘毅

チームの見どころ 【ソニーセミコンダクタ マニュファクチャリング】昨年度女子5位

チームの見どころ

【ソニーセミコンダクタ マニュファクチャリング】昨年度女子5位

【チームの戦い】
 大城監督が就任した昨シーズンは、浮き沈みの激しい1年になった。主力が大幅に若返ったこともあり、いい試合をしたかと思うと、その次の試合がグダグダだったりと、好調が2試合続かなかった。最たる例が、プレーオフ出場をかけた2月の戦い。オムロンに最高の試合をしてプレーオフ出場にリーチをかけながら、翌日のHC名古屋戦を落として、チャンスを逃してしまった。経験を積み、戦力も整った今シーズンは、プレーオフ返り咲きを狙う。

【予想布陣】
LW:松村(田村)
LB:安倍(ダイバ、川村)
CB:權根慧(鈴木、岩﨑)
RB:山野(川村、藤井)
RW:藤田明(諸岡)
PV:角南(ダイバ、山本)
GK:飛田(網谷、関澤)

6:0DFと5:1DF

 昨シーズンは鈴木をセンターに据えた年明けから、チームの状態が上向きになった。鈴木が入ると、攻守のバランスが整う。今シーズンは鈴木の手本となる權根慧(グォン・グンヘ)を獲得。權根慧の助けを借りながら、鈴木にゲームメイクを覚えさせる1年になるだろう。
 懸案の左サイドには、移籍直後のケガなどで1年間試合に出られなかった松村が入る。体調が万全であれば、右肩が遅れて出てくる不思議なサイドシュートで魅せてくれるはず。位置取りの上手い川村を先発ではなく、4人目のバックプレーヤーにすることで、チーム全体の得点力がアップした。

【人事往来】
IN
田村(筑波大)
岩﨑(筑波大)
山本(日本体育大)
藤田遙(明光学園)
權根慧(韓国)
角南(三重バイオレットアイリス)
OUT
カルリン(引退)
錦織(引退)

キャプテンだったカルリン、ポストでいい仕事をしていた錦織が引退した。錦織の穴をどう埋めるかが課題だった、角南が入ったことで一安心。周りと合わせる力があるから、バックプレーヤーの力を引き出してくれるだろう。
權根慧は実力のあるゲームメイカー。ヨーロッパスタイルを志向する大城監督だが「力のある選手は大歓迎」と、韓国人司令塔の技に期待している。田村と岩﨑は華陵高の全国優勝メンバーで、ハンドボールIQが高い。

【指揮官】
大城章監督
 早稲田大を卒業後、スペインに渡り、本場のハンドボールを学んだ。その後は早稲田大男子の監督を経て、去年から女子の世界に飛び込んだ。世界基準の強さと、女性の自立を選手に求めて、あえて自由度の高いチーム作りを選択している。指導者と選手との関係性が「支配と服従」になりがちな日本のスタイルを、根本から変えてくれそうな監督。安定した戦いができるようになれば、彼のビジョンや信念がもっと評価されるだろう。

【キープレーヤー】
鈴木理紗

鈴木理紗
鈴木理紗

 東海大時代は、1つ上の川村杏奈が絶対的な存在だった。しかしソニーに入ってからは、DFができるセンターとして評価を上げて、今ではチームの中心選手になった。2枚目を守れる当たりの強さがあり、5:1DFのトップで動ける機動力もある。OFではフィジカルを活かしたカットインで好機を作る。大城監督は事あるごとに「鈴木を代表に呼んでほしい」と訴える。「守れるセンター」という点では、大山真奈(北國銀行)とのポジション争いになるだろう。
 のびしろを多く残した選手で、これからの課題はゲームの起承転結を学ぶこと。自分の得点力だけに頼らず、60分トータルで試合を組み立てる術を覚えていきたい。權根慧を手本に、ゲームメイカーとしてさらなる成長を。

【この技を見よ!】
・山野由美子の肩甲骨

山野由美子
山野由美子

 入社2年目から左肩のケガに苦しんできた山野が、昨年から徐々に復活してきた。7年目の今年は状態もよく、肩甲骨が大きくスライドする独特のロングシュートの精度が戻ってきた。「4年ぐらいまともにシュートを打ってないので、29歳ですけど、25歳ぐらいの気持ちで」と言うように、肩がすり減っていないことをプラスにとらえている。以前のようなロング一辺倒ではなく、アウトフェイントも密かに上達している。
また今年からキャプテンに就任。リーダータイプのキャラではないが、後輩に妙に懐かれるという新しいキャプテン像で、チームを引っ張っていく。

久保弘毅

チームの見どころ 【豊田合成】昨年度男子5位

チームの見どころ

【豊田合成】昨年度男子5位

【チームの戦い】
 毎年的確な補強をしているのに、プレーオフにあと一歩届かない。昨シーズンも元スペイン代表のウーゴ・ロペスと、日本トップクラスのディフェンダー・武田享を補強しながら、5位に終わった。今年はラストピースとして田中茂監督を招聘し、悲願のプレーオフ初出場を目指す。

【予想布陣】
LW:野田(津波古)
LB:小塩(水町)
CB:樋口(藤)
RB:趙顯章(ウーゴ、今村)
RW:出村(今村、上田)
PV:橋本(舘盛)
GK:佐々木(藤戸、藤田)

6:0DF
 
 ウーゴを筆頭に、開幕から故障者続出で、ベストメンバーがなかなか組めないのが悩みの種。それでも3回戦制になった今シーズンは、合成の選手層の厚さがプラスに作用するだろう。各ポジションに一芸を持った選手がいるのが心強い。
 今シーズンから大きく変わったのがDFの配置。同じ6:0DFでも、今年は運動量を重視する2枚目に樋口を置いて、スタミナ切れが課題だったウーゴを2枚目から3枚目に配置転換した。趙はコラソン時代からハードワークに定評があり、DFでも真ん中で柱になってほしい存在。田中監督は脚力のある新人水町を、真ん中を守れるバックプレーヤーに育てようとしている。GK佐々木も含めてスケールの大きいDFラインは、合成の売りのひとつ。日本代表のダグル・シグルドソンヘッドコーチに見出だされた佐々木は、代表合宿で自信をつけて、今年から合成でも正GKになった。

【人事往来】
IN
水町(日本大)
藤(日本体育大)
趙顯章(琉球コラソン)
大橋(復帰)
OUT
榊原(引退)
中島(引退)
芳仲(引退)
藤堂(引退)
 
 かつての正GK藤堂、クイックシューターの中島ら、ひと昔前の合成を支えた主力たちが引退。血の入れ替えが進んでいる。
 新人の水町は、よくも悪くも「打ち屋」体質。打ち込める強さはあるので、いつ、どこで打つべきかを整理すれば、大きく飛躍しそう。藤はスピードのあるセンター。アップテンポな展開で役に立つ。趙の補強は、スタミナが切れやすいウーゴを補うだけでなく、2人同時にコートに立った時が楽しみ。ドイツでプレーしていた大橋は、練習生を経て復帰。いつも声を出す姿は、チームの雰囲気作りに欠かせない。

【指揮官】
田中茂監督
 三陽商会ではクレバーな選手で、日本代表の常連だった。引退後はスペインのバルセロナに留学し、その後はナショナルトレーニングセンターで指導していた。単独チームを見るのは49歳にして初めて。少々遅すぎる監督デビューにはなったが、理論派でコミュニケーション能力も高い。戦力は揃っているので、絶対的な統率力を示すことができれば、1年目からプレーオフ初出場の目標をクリアしてもおかしくない。

【キープレーヤー】
趙顯章(チャオ・シェンチャン)

趙顯章
趙顯章

 台湾代表の大型左腕が、琉球コラソンから移籍。ロングが打てて、体勢を崩しながらのアウト割りもできて、ポストパスもできる。チームにフィットしてくるこれからが楽しみ。勝負の責任を背負って、大事な場面で打ちに行くメンタリティが素晴らしい。またDFでのハードワークも趙の持ち味。積極的に動いて、ルーズボールに絡むあたりにも、人柄のよさが伺える。日本語を覚えて、大事な場面で「集中!」と言ったり、他チームの選手と試合後に肩を組んで「友達」と言うなど、愛すべきキャラクター。日本のハンドボール界に完全に溶け込んでいる。

【この技を見よ!】
・出村直嗣のシュート精度

出村直嗣
出村直嗣

 正統派のサイドシューターであり、日本で最も過小評価されている右サイド。フィニッシュの精度という点では、日本代表の渡部仁(トヨタ車体)、元木博紀(大崎電気)以上と言ってもいい。しかし「余計なことをしない」のが、出村のよさでもあり、物足りなさでもある。控えめで誠実な出村らしいと言えばそれまでだが、渡部なら回り込んでのミドルがあるし、元木にはスピードとブラインドシュートという飛び道具がある。出村もプレーの幅をもう少し広げてもいいのでは? 堅実無比のサイドシュートに、どんな味をプラスしていけるか。円熟期に入ったこれからの変わり身に期待。

久保弘毅