この選手が凄い! その13 吉田起子(オムロン)

この選手が凄い! その13

吉田起子
吉田起子

吉田起子(オムロン)
【驚異のロングシューター】
 ロングシュートに限定すれば、日本リーグの女子ではナンバーワン。気持ちよく腕を振った時のシュートは、恐ろしいほどの速さでゴールに突き刺さる。高く跳べて、腕が長くてよくしなり、1試合打ち続けられる肩のスタミナがある。まさにエースになるべくして生まれてきた選手。いい時の吉田は間違いなくワールドクラスのロングシューター。日本の女子には数少ない「打ち込める」ポテンシャルを持っている。
 しかし好不調の波が激しく、ボールをもらってからのプレーが多い日は、まったくもって「らしさ」を発揮できないままに終わってしまう。黄慶泳総監督は「僕と吉田との根比べです」と言って、吉田をエースに育てるべく、我慢強く起用してきた。その甲斐あって得点王のタイトルを獲った年もあったが、歴代のオムロンのエースと比べると、信頼度はイマイチだった。

【一芸枠でぜひ代表に!】
 しかし、最近は「いい吉田」が増えてきたと評判になっている。対戦相手からも「吉田が調子良すぎて、止められなかった」といったコメントが出てくるようになった。以前は「吉田なら守れる」イメージだったのに、「手がつけられない」日が増えてきた。黄慶泳総監督も「個人の意見だけど」と前置きしながら「吉田を代表に呼んでほしい」と言うようになった。
 現在の日本代表女子(おりひめジャパン)に足りないのはロングヒッター。7人攻撃で間を割って、数的優位を活かせる選手は揃っていても、ロングの怖さがない。熊本での世界選手権や来年の東京五輪を見据えて得点力アップを考えた場合に、世界で通用する打ち屋がほしい。その足りないピースに吉田がはまるかもしれない。
 シュートを打つ以外のことは、はっきり言って期待できない。でもOF限定で「5分間で2点取ってこい」が可能なタイプ。相手がべた引きで守ってきた時に、ベンチからひょいと出てきて、ロングを連発で決めてくれそうなのは、今の日本の女子では吉田か左腕の中山佳穂(大阪体育大)ぐらいだろう。

吉田起子
吉田起子

【めっちゃいいヤツ】
 代表合宿にも何度か呼ばれてはいるが、大事な大会ではメンバー入りしていない。それでも仲間のことを思って応援する。2015年のリオデジャネイロ五輪予選ではコールリーダーになり、応援団と現場との調整役を買って出た。昨年12月の熊本アジア選手権でも、先頭に立って応援していた。おりひめジャパンの応援団長も「ゴー(吉田のコートネーム)は本当に頼りになる」と、吉田の人間性を高く評価している。
 普段から明るく、愉快なキャラクター。他チームの後輩たちから「笑いの神」と言われるくらい、人柄がいい。でも、できることなら、今年の世界選手権ではベンチに入ってほしい。徹底マークされても打ち抜ける強さをプレーオフで証明できれば、代表からもう一度声がかかるはず。世界の舞台でも、1本のシュートで流れを変えられる選手だ。

久保弘毅