この選手が凄い! その3 藤本純季(トヨタ車体)

この選手が凄い! その3

藤本純季
藤本純季

藤本純季(トヨタ車体)

【よく声が出る】
 いくつになっても元気で、ハンドボールが大好き。いつも声を出しながら、楽しそうにプレーしている。最大の見せ場は点を取った後。シュートを決めて、叫びながら自陣に戻ってくる時の声がいい。高めの声で叫んでいるのだが、何を言っているかはよくわからない。トヨタ車体の先輩・門山哲也のような「雄叫び」ともまた違う。でも楽しそうだし、チームが盛り上がるから、それでOK。技術、体力を積み重ねて、そろそろベテランと呼ばれる年齢になってきたが、いつまでも若々しいフジモンでいてほしい。

【腕の振りが柔らかい】
 技術的な売りは、腕の振りの柔らかさ。球持ちがいいので、7mスローを任されている。フィジカル軍団トヨタ車体でビルドアップしながら、強さと柔らかさを両立させている。7mスローでは、オーソドックスな駆け引きで勝負。シュートのバリエーションが豊富な選手なので、もう少し遊びを増やしてもいいのでは? 大事な場面で任されることが多いので、今年こそは藤本が7mスローを決めて日本一に。1点差に泣いてきた歴史に終止符を打てるか。
 左サイドのポジションを争う杉岡尚樹と、腕の使い方の違いを見るのも面白い。特にループシュートでは、2人の違いが明確に出てくる。藤本は柔らかく腕をしならせて、脱力するタイプ。杉岡は内ひねりを強調して、腕をつき出すように打つタイプ。柔らかい軌道の藤本と、高く上がって急激に落下する杉岡との、ループの軌道の違いも見どころになる。

【意識が高い】
 試合中は味方や審判と、こまめに会話している。ファンや報道陣にも気さくに接してくれる。話はわかりやすく、ネガティブな感情を表に出さない。だから藤本の周りには人が集まる。
 昔はお調子者っぽいところもあったが、先輩たちの姿を見て学び、言葉にも深みが増してきた。迷った時に「一歩前へ」踏み出す姿勢がいい。講習会やチャリティーにも積極的で、事あるごとに「現役の選手が、今のハンドボール界をよくしていこう」と発信する姿は、尊敬に値する。
 現状への不平不満よりも、明るい未来のために、今の自分に何ができるか――こういう思いを持った選手が、次の世代へバトンをつないでいくことで、日本のハンドボール界は前進していくのだろう。

藤本純季選手は今シーズンのmelis契約選手です。

久保弘毅