「久保弘毅」カテゴリーアーカイブ

チームの見どころ 【HC名古屋】昨年度女子6位

チームの見どころ

【HC名古屋】昨年度女子6位

【チームの戦い】
 昨シーズンは早々に連敗を止めると、3勝をあげて、新井ヘッドコーチ就任1年目で「最下位脱出」の公約を達成した。チームの雰囲気が劇的によくなり、選手の表情も明るくなった。昔からハンドボールスクールの指導など、地元に根差した活動を続けてきたチーム。勝つことで全員が報われ、好循環に乗りつつある。昨年で培われた一体感をベースに、今年は覇気を前面に押し出し、本気でプレーオフ初出場を目指す。

【予想布陣】
LW:安齋(木村)
LB:福井(丸山、綿引)
CB:笠原(多田)
RB:髙宮(水谷)
RW:水谷(馬場)
PV:吉田(竹内、中屋敷)
GK:瀧澤(白築)

6:0DFと5:1DF

 待望のゲームメイカー・笠原の加入で、チーム力が飛躍的に向上した。ここ10年ほど泣き所だったポジションに本格的なセンターが加入したことで、攻撃の意図が明確になった。とはいえ、笠原もたまに熱くなるので、今年は冷静な髙宮を右バックにして、判断力の部分を肩代わりさせている。
 DFでは水谷がチームの柱。昨シーズン終盤は水谷の負傷欠場から失速してしまった。水谷が年間通して健康であることが、上位進出の最低条件。竹内がケガから復帰すれば、5:1DFのオプションも使える。GKは遅咲きの瀧澤が27歳になってから正GKの座を獲得した。周りへの声かけ、スローイングなど、今年は捕ること以外の成長が著しい。

【人事往来】
IN
綿引(東京女子体育大)
飯島(東北福祉大)
多田(武庫川女子大)
白築(桐蔭横浜大)
OUT
戸塚(引退)
 かつての正GKで、新井体制の1年目にキャプテンを務めた戸塚が引退。キャプテンを降りると、チームに残らずに引退してしまうのが、HC名古屋の悪しき伝統でもある。キャプテンが燃え尽きてしまわないよう、チーム全体でサポートしてほしい。ちなみに今年のキャプテンはエースの福井。
 新人では経験豊富な司令塔の多田に期待がかかる。綿引はロングヒッターだが、女子球界有数のフィジカルを活かして、ポストでも起用される予定。

【指揮官】
新井翔太ヘッドコーチ
 愛知高、中京大を経て、ドイツ留学ののちにHC名古屋で指導者になった生粋の名古屋人。若くして、ハンドボールの本質をよく理解している。戦術理解の徹底だけでなく、チームのあり方、選手の立ち居振る舞いなど、細かい部分にも目を配り、万年最下位のチームを立て直した。就任2年目の今シーズンの公約は「プレーオフ出場」。いい戦いだけでは満足しない若き指揮官のもと、チームは大きく変わりつつある。

【キープレーヤー】
髙宮咲

髙宮咲
髙宮咲

 チームが強くなる時に、必ず求心力となる選手が出てくる。HC名古屋の場合は、髙宮が求心力となっている。髙宮を慕って、大阪教育大の後輩・笠原もHC名古屋を選んだという。先輩たちからの信頼も厚く、先頭に立ってチームの改革に取り組んでいる。こまめな情報発信からも、「HC名古屋をよくしていきたい」思いが感じられる。
 コート上でも攻撃の中心で、冷静に全体を見て判断できる。新井ヘッド曰く「センターではないけど、チームで一番センターらしい感覚を持った選手」。今シーズンは本職の右サイドではなく、右バックでの出場機会が増えているのも、髙宮の判断力に新井ヘッドが期待しているから。右バックを主戦場にするなら、インへ移動してのミドルだけでなく、アウトを割るプレーを増やしていきたい。

【この技を見よ!】
丸山紀子のシュート力

丸山紀子
丸山紀子

桐蔭横浜大時代はサイドシューターだったが、地肩の強さと運動能力を買われて、HC名古屋ではバックプレーヤーになった。不慣れなポジションに戸惑う日々が続いていたが、新井ヘッドに教わってコツをつかみ、男子顔負けの運動能力がシュートに反映されるようになった。豪快なミドルシュートに、新井ヘッド直伝のステップシュートが決まるようになり、「やっとハンドボールが楽しくなりました」。男子のような迫力のあるプレーで、チームに勢いをもたらす。ベンチからの得点源として貴重な存在。
コート外ではいい意味でのお調子者で、男子中学生のようなキャラクター。最近はハンドボールが上達し、「男子高校生にレベルアップしました」とのこと。

久保弘毅

チームの見どころ 【琉球コラソン】昨年度男子6位

チームの見どころ

【琉球コラソン】昨年度男子6位

【チームの戦い】
 長年司令塔を務めた水野裕紀が昨年から兼任監督になり、若返りに取り組んでいる。よくも悪くも、人の入れ替わりが激しいのがチームカラーで、今シーズンは大砲の趙顯章が移籍した。水野監督、村山、石田ら2008年リーグ加盟当初の一期生もベテランになり、次世代を担う生え抜きの育成が引き続きテーマになってくる。

【予想布陣】
LW:牧山(仲程、三村)
LB:石川(村山、棚原)
CB:村山(赤塚、水野、又吉)
RB:福田(村山、大和田)
RW:名嘉(浅井、中村)
PV:松信(伊計、連)
GK:内田(石田、田村)

6:0DF

 新人の仲程、浅井は決定力のある両サイドだが、まだDFに不安が残る。ベンチに近い側の時のみ出場して、DFでは牧山、名嘉が2枚目に入り、バランスを整えている。松信以外に真ん中を守れる人材がほしいところに、伊計が去年から台頭してきた。ここに大和田がもう1枚加われば、ローテーションが楽になる。以前にも増してOF型の選手が増えたため、かつてのコラソンの代名詞だった3:3DFは封印されている。
 攻撃陣ではバックプレーヤーの層の薄さが深刻。上手い選手は多いが、絶対的な決め手に欠ける。赤塚を左サイドに回せるくらいの余裕が出てくれば、四強に食い込めるのだが…。人手不足に悩んでいたタイミングで、元エース・棚原の復帰は朗報。

【人事往来】
IN
浅井(中京大)
仲程(東海大―デンマーク)
中川(朝日大)
東長濱(アドバイザーで復帰)
棚原(復帰)

OUT
趙顯章(豊田合成)

 左の大砲で、1年かけてチームになじませてきた趙が移籍した。真ん中を守れて、ロングが打てる趙の穴はとてつもなく大きい。台湾ルートで、趙に続く掘り出し物を補強できれば面白いが、若手を起用することも大事。新人では仲程、浅井の両サイドの決定力は、リーグでも通用している。
 チームの頭脳だった東長濱秀作が、今年からアドバイザーで復帰したのは嬉しいニュース。水野監督がコートに立った時に、ベンチワークを任せられる。また海外挑戦で宙に浮いていた棚原が復帰したのは大きい(10月21日の豊田合成戦から出場可能)。2年前はOFでの暴走が目立った棚原だが、東長濱アドバイザーなら棚原を制御できる。

【指揮官】
水野裕紀監督
 長年チームを率いてきた東長濱秀吉監督(東長濱秀作アドバイザーの父)に代わり、昨年から兼任で指揮を執る。選手との年齢も近く、毎日の練習をしっかりと見ることで、若手のモチベーションを高めてきた。チーム全体にハードワークを落とし込んでいるのも好印象。監督業が主とはいえ、スムーズなボール回しは健在。むしろ兼任になってからの方が、短時間で攻撃を立て直せているようにも見える。一時期ほど7人攻撃を使わなくなったが、勝負どころでは7人攻撃を仕掛けてくる。

【キープレーヤー】
福田丈

 右サイドのレギュラーだったが、趙が抜けた今年から右バックになった。元々が中部大インカレ優勝時の右バックで、本来のポジションに戻って「プレーしやすい」と喜んでいる。持ち味は視野の広いプレー。趙のようなロングの迫力は求められないが、コート全体が見えていて、正確にパスを配れる。シュートのバリエーションも豊富で、苦しい場面でのステップシュートはチームを救う武器になる。これまでの2年間とは異なる福田の魅力が、今年は見られるだろう。

【この技を見よ!】
・石川出のハードワーク

石川出
石川出

 大崎電気の時はスポットでしかコートに立てず、苦しんでいた。昨シーズンにコラソンに移籍してからは出場時間が増えて、攻守によさが出るようになった。自分のアピールだけにこだわるよりも、常にチームのことを考えてプレーした方が、石川の「らしさ」が出る。攻撃では常に前を狙いながら、周りを活かせる。守ってはハードワークで、味方を助ける。昨シーズンは特に、「DFでここまで身体を張るか!」というくらい、献身的なプレーが印象的だった。
打てて、守れて、勝負強くて、リーダーシップも発揮できる日体大時代のよさが、ようやく日本リーグでも見られるようになった。今年もフォア・ザ・チームのプレーでコラソンをリードしてくれるに違いない。年間通してチームの中心に置いておきたい選手なので、ケガには気をつけて。

久保弘毅

チームの見どころ 【ソニーセミコンダクタ マニュファクチャリング】昨年度女子5位

チームの見どころ

【ソニーセミコンダクタ マニュファクチャリング】昨年度女子5位

【チームの戦い】
 大城監督が就任した昨シーズンは、浮き沈みの激しい1年になった。主力が大幅に若返ったこともあり、いい試合をしたかと思うと、その次の試合がグダグダだったりと、好調が2試合続かなかった。最たる例が、プレーオフ出場をかけた2月の戦い。オムロンに最高の試合をしてプレーオフ出場にリーチをかけながら、翌日のHC名古屋戦を落として、チャンスを逃してしまった。経験を積み、戦力も整った今シーズンは、プレーオフ返り咲きを狙う。

【予想布陣】
LW:松村(田村)
LB:安倍(ダイバ、川村)
CB:權根慧(鈴木、岩﨑)
RB:山野(川村、藤井)
RW:藤田明(諸岡)
PV:角南(ダイバ、山本)
GK:飛田(網谷、関澤)

6:0DFと5:1DF

 昨シーズンは鈴木をセンターに据えた年明けから、チームの状態が上向きになった。鈴木が入ると、攻守のバランスが整う。今シーズンは鈴木の手本となる權根慧(グォン・グンヘ)を獲得。權根慧の助けを借りながら、鈴木にゲームメイクを覚えさせる1年になるだろう。
 懸案の左サイドには、移籍直後のケガなどで1年間試合に出られなかった松村が入る。体調が万全であれば、右肩が遅れて出てくる不思議なサイドシュートで魅せてくれるはず。位置取りの上手い川村を先発ではなく、4人目のバックプレーヤーにすることで、チーム全体の得点力がアップした。

【人事往来】
IN
田村(筑波大)
岩﨑(筑波大)
山本(日本体育大)
藤田遙(明光学園)
權根慧(韓国)
角南(三重バイオレットアイリス)
OUT
カルリン(引退)
錦織(引退)

キャプテンだったカルリン、ポストでいい仕事をしていた錦織が引退した。錦織の穴をどう埋めるかが課題だった、角南が入ったことで一安心。周りと合わせる力があるから、バックプレーヤーの力を引き出してくれるだろう。
權根慧は実力のあるゲームメイカー。ヨーロッパスタイルを志向する大城監督だが「力のある選手は大歓迎」と、韓国人司令塔の技に期待している。田村と岩﨑は華陵高の全国優勝メンバーで、ハンドボールIQが高い。

【指揮官】
大城章監督
 早稲田大を卒業後、スペインに渡り、本場のハンドボールを学んだ。その後は早稲田大男子の監督を経て、去年から女子の世界に飛び込んだ。世界基準の強さと、女性の自立を選手に求めて、あえて自由度の高いチーム作りを選択している。指導者と選手との関係性が「支配と服従」になりがちな日本のスタイルを、根本から変えてくれそうな監督。安定した戦いができるようになれば、彼のビジョンや信念がもっと評価されるだろう。

【キープレーヤー】
鈴木理紗

鈴木理紗
鈴木理紗

 東海大時代は、1つ上の川村杏奈が絶対的な存在だった。しかしソニーに入ってからは、DFができるセンターとして評価を上げて、今ではチームの中心選手になった。2枚目を守れる当たりの強さがあり、5:1DFのトップで動ける機動力もある。OFではフィジカルを活かしたカットインで好機を作る。大城監督は事あるごとに「鈴木を代表に呼んでほしい」と訴える。「守れるセンター」という点では、大山真奈(北國銀行)とのポジション争いになるだろう。
 のびしろを多く残した選手で、これからの課題はゲームの起承転結を学ぶこと。自分の得点力だけに頼らず、60分トータルで試合を組み立てる術を覚えていきたい。權根慧を手本に、ゲームメイカーとしてさらなる成長を。

【この技を見よ!】
・山野由美子の肩甲骨

山野由美子
山野由美子

 入社2年目から左肩のケガに苦しんできた山野が、昨年から徐々に復活してきた。7年目の今年は状態もよく、肩甲骨が大きくスライドする独特のロングシュートの精度が戻ってきた。「4年ぐらいまともにシュートを打ってないので、29歳ですけど、25歳ぐらいの気持ちで」と言うように、肩がすり減っていないことをプラスにとらえている。以前のようなロング一辺倒ではなく、アウトフェイントも密かに上達している。
また今年からキャプテンに就任。リーダータイプのキャラではないが、後輩に妙に懐かれるという新しいキャプテン像で、チームを引っ張っていく。

久保弘毅

チームの見どころ 【豊田合成】昨年度男子5位

チームの見どころ

【豊田合成】昨年度男子5位

【チームの戦い】
 毎年的確な補強をしているのに、プレーオフにあと一歩届かない。昨シーズンも元スペイン代表のウーゴ・ロペスと、日本トップクラスのディフェンダー・武田享を補強しながら、5位に終わった。今年はラストピースとして田中茂監督を招聘し、悲願のプレーオフ初出場を目指す。

【予想布陣】
LW:野田(津波古)
LB:小塩(水町)
CB:樋口(藤)
RB:趙顯章(ウーゴ、今村)
RW:出村(今村、上田)
PV:橋本(舘盛)
GK:佐々木(藤戸、藤田)

6:0DF
 
 ウーゴを筆頭に、開幕から故障者続出で、ベストメンバーがなかなか組めないのが悩みの種。それでも3回戦制になった今シーズンは、合成の選手層の厚さがプラスに作用するだろう。各ポジションに一芸を持った選手がいるのが心強い。
 今シーズンから大きく変わったのがDFの配置。同じ6:0DFでも、今年は運動量を重視する2枚目に樋口を置いて、スタミナ切れが課題だったウーゴを2枚目から3枚目に配置転換した。趙はコラソン時代からハードワークに定評があり、DFでも真ん中で柱になってほしい存在。田中監督は脚力のある新人水町を、真ん中を守れるバックプレーヤーに育てようとしている。GK佐々木も含めてスケールの大きいDFラインは、合成の売りのひとつ。日本代表のダグル・シグルドソンヘッドコーチに見出だされた佐々木は、代表合宿で自信をつけて、今年から合成でも正GKになった。

【人事往来】
IN
水町(日本大)
藤(日本体育大)
趙顯章(琉球コラソン)
大橋(復帰)
OUT
榊原(引退)
中島(引退)
芳仲(引退)
藤堂(引退)
 
 かつての正GK藤堂、クイックシューターの中島ら、ひと昔前の合成を支えた主力たちが引退。血の入れ替えが進んでいる。
 新人の水町は、よくも悪くも「打ち屋」体質。打ち込める強さはあるので、いつ、どこで打つべきかを整理すれば、大きく飛躍しそう。藤はスピードのあるセンター。アップテンポな展開で役に立つ。趙の補強は、スタミナが切れやすいウーゴを補うだけでなく、2人同時にコートに立った時が楽しみ。ドイツでプレーしていた大橋は、練習生を経て復帰。いつも声を出す姿は、チームの雰囲気作りに欠かせない。

【指揮官】
田中茂監督
 三陽商会ではクレバーな選手で、日本代表の常連だった。引退後はスペインのバルセロナに留学し、その後はナショナルトレーニングセンターで指導していた。単独チームを見るのは49歳にして初めて。少々遅すぎる監督デビューにはなったが、理論派でコミュニケーション能力も高い。戦力は揃っているので、絶対的な統率力を示すことができれば、1年目からプレーオフ初出場の目標をクリアしてもおかしくない。

【キープレーヤー】
趙顯章(チャオ・シェンチャン)

趙顯章
趙顯章

 台湾代表の大型左腕が、琉球コラソンから移籍。ロングが打てて、体勢を崩しながらのアウト割りもできて、ポストパスもできる。チームにフィットしてくるこれからが楽しみ。勝負の責任を背負って、大事な場面で打ちに行くメンタリティが素晴らしい。またDFでのハードワークも趙の持ち味。積極的に動いて、ルーズボールに絡むあたりにも、人柄のよさが伺える。日本語を覚えて、大事な場面で「集中!」と言ったり、他チームの選手と試合後に肩を組んで「友達」と言うなど、愛すべきキャラクター。日本のハンドボール界に完全に溶け込んでいる。

【この技を見よ!】
・出村直嗣のシュート精度

出村直嗣
出村直嗣

 正統派のサイドシューターであり、日本で最も過小評価されている右サイド。フィニッシュの精度という点では、日本代表の渡部仁(トヨタ車体)、元木博紀(大崎電気)以上と言ってもいい。しかし「余計なことをしない」のが、出村のよさでもあり、物足りなさでもある。控えめで誠実な出村らしいと言えばそれまでだが、渡部なら回り込んでのミドルがあるし、元木にはスピードとブラインドシュートという飛び道具がある。出村もプレーの幅をもう少し広げてもいいのでは? 堅実無比のサイドシュートに、どんな味をプラスしていけるか。円熟期に入ったこれからの変わり身に期待。

久保弘毅

チームの見どころ 【三重バイオレットアイリス】昨年度女子4位

チームの見どころ

【三重バイオレットアイリス】昨年度女子4位

【チームの戦い】
 昨シーズンはリーグ加盟11年目で初のプレーオフ進出を果たした。これまで顔ぶれが決まっていた女子の四強に食い込んだ功績はとてつもなく大きい。櫛田監督がチームの青写真をしっかりと描き、梶原ビジネスマネージャーが地域とのつながりを作り、高井プロモーションマネージャーが写真と動画でチームの魅力を伝える――この3つの柱が機能したことで、三重の選手の意識が飛躍的に高まり、リーグ屈指の人気チームになった。「クラブチームのあり方」を追求する三重の存在は、企業チームにとってもお手本になる部分は多い。

【予想布陣】
LW:河嶋(近藤)
LB:原(多田、中田)
CB:加藤(林)
RB:多田(万谷、森本)
RW:島居(佐野)
PV:近藤(原、森本)
GK:高木(花村)

6:0DFと5:1DF

 原と万谷が真ん中を守り、GKの花村との3人で試合を落ち着かせて、途中から爆発力のあるGK高木(旧姓山根)を投入して一気に突き放す。昨シーズンはこのフォーマットが上手く機能した。大当たりはないが、いつもほどほどに当たる花村と、局地的な爆発力のある高木の使い分けが、60分トータルで試合を作るギアチェンジの役割を果たした。今年は精神的な成長が見られる新婚の高木を先発GKに据えて、スタートダッシュを狙う。
 課題は右サイドとポスト。特にポストは絶対的な選手がいないので、原の強さ、近藤の動き、左腕・森本の意外性を使い分けながら、バックプレーヤーを4人配置するような戦い方になるだろう。

【人事往来】
IN
林(桐蔭横浜大)
中田(福岡大)
島居(武庫川女子大)
水谷(茨城大)
OUT
伊藤(練習生に)
角南(ソニーへ移籍)
池原(デンマークに移籍)

 チームで一番のフィニッシャーだった池原、攻撃を組み立てるポイントになっていた角南、この2人が抜けたのは痛い。代表クラスの右サイドとポストの穴をどうやって埋めるかが、新しいシーズンの課題になる。
 櫛田監督が「4人とも大当たり」と言う新人は、早い段階で戦力になっている。林は桐蔭横浜大を初のインカレ3位に導いたゲームメイカー。ポストとの2対2だけでなく、スペースを作る動きが上手い。中田はDF力とリーダーシップがあり、真ん中だけでなくトップDFでも使える。島居は高低を使い分けるサイドシュートが魅力で、何年もチームにいるような落ち着きがある。水谷はケガで出遅れたが、肉体派の左利きで期待は大きい。

【指揮官】
櫛田亮介監督
 日本の女子球界を変えるであろう指導者。ドイツでプレーした経験に、大ケガを乗り越えて北陸電力で社外選手としてプレーを続けた経験など、自分自身をマネジメントしてきた蓄積が、今のチーム運営に生きている。まっとうなビジネス感覚を持ち、目の前の結果に振り回されず、やるべきことを積み重ねていける監督。理不尽さのないベンチワークも、見ていて気持ちいい。

【キープレーヤー】
森本方乃香

森本方乃香
森本方乃香

 ゴリゴリカットインを得意とする肉体派ユニット「ゴリゴリシスターズ(通称GGS)」の一員。2年目の今年はポスト挑戦を志願して、5月の社会人選手権ではスペースに走り込むなど、気の利いたプレーでチームを盛り上げた。ポストの動きを勉強することで、本来のバックプレーヤーでの動きもよくなってきたとのこと。攻撃の「表と裏」が見えてきたサウスポーのこれからが楽しみ。多田仁美とのGGSでの活動にも期待。

【この技を見よ!】
・原希美の笑顔

原希美
原希美

 チームでも日本代表でもキャプテンの頑張り屋さん。苦しい時でも歯を食いしばって、勝利のために体を張れるのが、原の最大の長所である反面、1人で頑張りすぎるところもあった。ところがここ1年くらいで、いい意味で肩の力が抜けてきた。すべてを自分だけで背負い込むのではなく、仲間の力を借りながら、試合の節目でいい仕事をするようになった。コート上での笑顔が増え、肩の力が抜けたことで、プレーの幅も広がった。1試合に15本ぐらいシュートを打っていた「私が引っ張る」時代よりも、「仲間と頑張る意味」を理解した今の原の方が、チームにより多くのプラスをもたらしている。苦しい場面でも「私の顔を見て」と言えるリーダーがいるチームは強い。