「ハンドボール観戦」カテゴリーアーカイブ

今週末はプレーオフ(ハンドボール)-1

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今週末はプレーオフ

 

・国内最高峰のタイトル

3月26、27日に日本リーグのプレーオフがあります。シーズンの締めくくりで、国内の四大大会(実業団選手権、国体、日本選手権、日本リーグ)の中でも最も権威のある大会です。このプレーオフのタイトルを獲るために、選手たちは1年間戦っています。

 

準決勝4試合の組み合わせを順に見ていきましょう。

 

・女子第一試合、北國銀行×広島メイプルレッズ

レギュラーシーズン全勝の北國銀行は、実業団選手権、国体、日本選手権も無敗で制しています。今季負けなしの北國が無傷で四冠を達成するかが、大きな見どころになります。日本代表の角南をケガで欠いてもなお選手層が厚く、様々な組み合わせで勝負できるのが強みです。一番の売りはGK寺田のライナースロー。八十島、鰍場の両サイドを走らせるだけでなく、時には真ん中にいるポストの横嶋(か)にも速攻のパスを通します。サッカーのサイドアタックと中央突破を使い分けるかのような、速攻でのロングフィードは必見です。

 

セットオフェンスでは、日本代表で活躍した横嶋姉妹の「縦の2対2」が軸になります。妹の横嶋(彩)がセンターで自由奔放に動き回り、姉の横嶋(か)がポストで合わせるコンビネーションは、まさに阿吽の呼吸。特に横嶋(か)は史上初の9割を越えるシュート率を記録しました。勝負どころでは必ずと言っていいほど得点に絡んでくるので、ライン際で動き回る横嶋(か)からは目が離せません。

 

対する広島メイプルレッズはレギュラーシーズン最終戦の飛騨高山ブラックブルズ岐阜戦に勝って、最後のひと枠に滑り込みました。急激な若返りを図った影響もあり、不安定な戦いが続いていましたが、両サイドとポストはしっかりしています。左サイドの松村は日本代表の左サイドでもあり、肩が外れたような独特のシュートフォームが持ち味です。右サイドの門谷は貴重な守れる左利き。高山は攻撃力だけに限定すれば国内NO.1のポストです。ライン際で高山をどれだけ生かせるか。高山がバックプレーヤーに回る時間帯もありますが、できればポストに専念させたいところです。

 

守りではGK毛利の阻止率に注目です。最終戦では阻止率8割という、信じられないような数字を残しました。ノーマークへの反応がよく、大胆なキーピングで会場を沸かせます。第一試合の最大の見どころは「8割止めるGK毛利VS9割決める横嶋(か)」と言ってもいいでしょう。北國優位は間違いありませんが、広島はGK毛利の大爆発があれば、大逆転の可能性も出てきます。

 

久保弘毅

ハンドソープボール

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世界ゆるスポーツ協会をご存じでしょうか?
スポーツを誰もが楽しめるように、日々新たな競技を考案している団体です。

こちらで考案されたスポーツの一例としてイモムシラグビーというのがあります。
これは、脇から足首まである、イモムシのユニフォーム(というより胴巻き)を着て行うラグビーで、全く走れないという特徴があります。
タックルもできません。
そのように動きずらい障害を作ることで、誰もが(子供やお年寄りであっても)楽しめるように、と競技が考案されているのです。
このイモムシラグビー、画像を検索してご覧いただくと、ユーモラスな姿にほっとすること請け合いです。

さて、世界ゆるスポーツ協会の手にかかると、ハンドボールがこうなります、というのがハンドソープボール。
ソープ、即ち石鹸を手に、ボールにつけて行うハンドボールです。
こちらはテレビでも何度か紹介されており、KAT-TUNの中丸雄一さんがシューイチで体験されたりもしています。アンバサダーには東俊介さんのお名前があります。

ルールは簡単。通常のハンドボールとほとんど同じなのですが、1チーム7名ではなく6名、しかもうち1人が「ソーバー」になります。
ソーパーって初めて聞かれるポジションだと思いますが、選手の手にハンドソープを塗る係りです。
試合はボールを落としたりすると手にハンドソープが足され、試合が進むにつれて、だんだんとぬるぬるとなっていきます。

このぬるぬるのボールがつるんっと滑るところにゲームの楽しさがあります。
そのため、運動神経の良し悪しで活躍できたりできなかったりがあまりない、つまりは参加した誰もが楽しめるというところが特徴です。

この競技、試合を行う施設の了解をきちんと取っておく必要がありますが、ハンドソープはそのうち蒸発してしまうので、想像されるよりもキレイに終わります(石鹸、ですしね)。
いい靴を履いてプレーする必要は全くありません(ジャンプシュートなど、ボールが持てないため機会がないですし)が、普段使いのハンドボールシューズを持っていったりすると、返ってキレイになるかもしれません。

ルールは以下の通り
1:基本的にはハンドボールと同じで、前後半が10分ずつ。
2:1チーム6人
フィールドプレーヤ4人 GK1人 ソーパー1人
3:試合前に2ソープを手に付ける。
4:ボールを落とした場合、落下させた人がソーパー(フィールド外)
の所に行き、手に1ソープを付ける。
5:胸でキャッチすると反則(キーパーをのぞく)で、1ソープ追加。
6:キーパーがボールを落としたらソープ追加
7:ボールがフィル度から出たらボールにソープを付ける
などなどです。
詳しくは下記のホームページをご覧下さい。

ハンドソープボール ホームページ
http://yurusports.com/archives/106

画像は上記ホームページより。

ハンドボールの魅力-6:0DF

6:0DF 久保弘毅
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6:0DFは6mのゴールライン付近に6人が一線になって並ぶシステムです。最もオーソドックスで、相手にスペースを与えない守り方です。上背のある選手を揃えて6:0DFをすれば、ロングシュートを枝(ディフェンスの上げた腕)で防げますし、間を割られるリスクも少なくなります。大型選手がライン際にべったりと引いて(通称「べた引き」)守れば、理論上は最強です。

ところが6:0DFの枝の上からロングシュートを打ち込まれると、苦しくなります。国際大会になると、11mぐらいから打ち込めるバックプレーヤーが、どの国にも必ず1人はいます。ロングが怖くて前に出ると、ポストにパスを落とされて、ポストを守ろうとするとロングを打ち込まれる――こうなると完全に悪循環ですね。マークの受け渡しが不十分になり、2人揃って前に出ようものなら、ポストが完全にノーマークになります。

ロングとポストのシンプルな2対2だけど、ロングシューターに威力があり、ポストプレーヤーが大型だと、これだけやられてしまいます。中東勢にやられる時のよくあるパターン。「決してきれいなハンドボールじゃないんだけどな」といった負け惜しみのひとつも言いたくなりますが、ハンドボールはコンタクトスポーツで、なおかつサイズスポーツでもあります。

こういう大きなポストを守るために、6:0DFだけどポストだけはマンツーマンで守る方法もあります。相手のポストが移動した時に、ディフェンスがそのままついて行っているかどうかが、ひとつのチェックポイントになります。

その他にも6:0DFだけど2枚目(両端から2人目)が高めの位置でピストンする守り方もあります。見た目が4:2DFのような6:0DFもあります。この場合は2枚目の運動量が生命線になってきます。

オーソドックスな6:0DFで有名なのは、男子ならトヨタ車体、女子ならオムロンでしょう。北國銀行はサイズがない分、同じ6:0DFでもピストン(出たり戻ったりする動き)が頻繁になります。高校では女子の高松商業がオーソドックスな6:0DFだけで日本一になっています。マンツーマンなど奇策を一切使わず、相手のロングシューターを上手に封じます。高松商業の田中潤監督は「ウチは運動量が少ないから『あまり守ってなさそうなのに、なんで守れるの?』とよく質問されますけど、一生懸命頭を使って守っているんですよ」と言っていました。戦術理解がしっかりしていれば、オーソドックスな6:0DFが最強なのでしょう。

ハンドボールの魅力-ディフェンスシステムを見る

・ディフェンスシステムを見る 久保弘毅

ディフェンスシステムが変わると、試合の流れも変わります。また、どういったディフェンスシステムを使い分けているかで、チームの特徴も見えてきます。

ハンドボールはゾーンディフェンスで守ります。なぜならハンドボールはバスケットボールよりもコートが広いので、1対1をマンツーマンで守り切るのが難しいからです。1対1の原則は、スペースが広ければ広いほど攻撃側が有利になります。

だからディフェンス6人をいろんな形に並べて、目の前の選手を「そのまま」マークしたり、隣とマークマンを「スイッチ」(もしくは「チェンジ」)したりしながら守ります。原則として目の前のゾーンにいる選手が、自分の受け持ちになります。この「自分のマークが取れている」状態かどうかを見ていくと、わかりやすいでしょう。

相手が速攻で押してきた時も、まずは個々がマークを取ることから始めます。セットディフェンスの最初の状態では必ずマークが取れているはずです。攻撃側はマークを外したりミスマッチを作ったりするために、ポジションチェンジで揺さぶりをかけます。逆に守る側はマークがずれたり、重なったりしないよう、声を出して隣との連携を図ります。

「そのまま」と「スイッチ」を上手に使い分けて、マークの受け渡しが完璧であれば、理論上は失点することはありません。しかし実際にはサイズのミスマッチができたり、ノーマークの選手を作ってしまったりと言った事態が起こります。また、どのシステムにも必ず弱点があり、変則的なシステムほど、はまった時は鮮やかですが、崩されるリスクも大きいことも知っておきましょう。

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ハンドボールの魅力-点数をコントロールする

・点数をコントロールする 久保弘毅
点差だけでなく、全体の得点数にも注目してください。得点数を見れば、試合のコンセプトも見えてきます。ハンドボールは1試合25点ぐらいが目安になり、20点を切るようだとロースコア、30点を超えるようならハイスコアと言われます。セットオフェンスの「良質な得点」だけだと、25点ぐらいが限度です。上積みをするには、速攻での「シンプルな得点」がどうしても必要になってきます。

たとえば高校の男子で、速攻が得意なチーム同士になると、42-34のようなスコアになりがちです。反対に女子のように守り合いを志向するチーム同士の対戦では14-12のようなロースコアに落ち着きます。速攻で押さずに、セットオフェンスをゆっくりやることで、攻撃回数をわざと減らしているのです。

ハイスコアを志向するチームとロースコアを志向するチームが対戦したら、テンポのコントロールが見どころになってきます。ロースコアにしたいチームは、走りたい相手をじらすかのように、わざとゆっくりボールを運びます。時間をかけてセットオフェンスを組み立てていくうちに、いつの間にか相手の足が止まってしまうのが狙いです。逆にハイスコアにしたいチームは、序盤から速攻、クイックスタートで押しまくり、相手の体力を削りにかかります。「訳がわからないうちに失点が増えていく」状況に相手を追い込むのが、速攻で勝負したいチームの狙いです。

こういったゲームコントロールが巧みなのが、今季の三重バイオレットアイリスです。基本はロースコアで統一しながら、守りでリズムを作りたい相手には速攻を増やして、セットで守る時間を作らせません。櫛田亮介監督がしっかりとゲームをデザインしている印象があります。

櫛田監督
櫛田監督