日本男子代表#9 森淳(大崎電気)
此花学院高―大阪体育大 29歳 190cm 100kg 右利き ポスト
■どんな選手?/サイズと運動能力に恵まれた大型ポスト。メキシコ人の父を持ち、「ぺレ」もしくは「ペレス」と呼ばれている。非常に人柄がよく、他チームの選手からも慕われている。唯一の弱点は持病のヒザ痛で、今年1月の直前合宿でリタイアし、アジア選手権ではベンチ入りできなかった。ヒザさえ万全であれば、実力、経験、人間性ともに、日本の真ん中を任せられるだけの人物。
■鑑賞ポイント/思いやりのある2対2。バックプレーヤーが気持ちよくプレーできるよう、黒子に徹する。それでいてポストシュートは高確率。
■活躍の場/よくも悪くもエゴを見せません。首脳陣や仲間からの信頼は十二分にあるので、プレーに主体性が出てくれば言うことなし。
久保弘毅
日本男子代表#8 渡部仁(トヨタ車体)
大分舞鶴高―日本大 26歳 183cm90kg 左利き 右サイド
■どんな選手?/世界のワタナビー。アジアの大会で活躍するたびに、現地のアナウンサーが「ワタナビー」と連呼していたため、ファンの間でこの呼び名が定着した。サイドの決定力が長年の課題だった日本代表で、大型GKを相手にここまで堂々と決め切れるサイドは過去に例がない。近め、遠め、ループを正確に打ち分け、最近は2枚目を守れるだけのフィジカルがつき、完成の域に近づいてきた。サイドから回り込んでのミドルも大きな武器。
■鑑賞ポイント/7割決めて当たり前。高確率なサイドシュート。
■活躍の場/今もっとも脂の乗っているサイドプレーヤーです。トヨタ車体から出向という形で、1年ぐらいヨーロッパでプレーしてもいいのでは?
日本代表男子#6 加藤嵩士(大同特殊鋼)
愛知高―愛知大 26歳 187cm95kg 右利き ポスト
■どんな選手?/冷蔵庫のような体で、スペースを走りまくるポスト。フィジカルがあって泥臭く、球際のしぶとさがあるので、対戦相手からも一目置かれている。OF専門の印象が強かったが、近年は代表の真ん中を守るようになり、攻守にチームを背負える選手に育ってきた。大同特殊鋼では元韓国代表の朴重奎がいるため出番が限られているのが、実にもったいない。
■観賞ポイント/セットOFの陰の支配者。ロングシューターに気を取られていると、DFの裏でいつの間にかフリーになっている。
■活躍の場/気持ちもあって、頭もあり、体もあります。責任を背負わせるほどに成長する選手です。大同特殊鋼でフル出場させてください。お願いします。
日本代表男子#5 高智海吏(トヨタ車体)
境高―大阪体育大 31歳 186cm90kg 左利き 右バック・右サイド
■どんな選手?/フィジカルに優れた左利き。身体接触を恐れることなく、大きな相手にも得意のカットインで向かっていく。高1までバスケをやっていたので、ハンドボールのキャリアは浅く、伸びしろを期待され続けてきた。未だに若々しいポカをする時もあるが、ポストパスを出せるようになったし、国際試合での強さは頼もしい限り。ケイン・コスギにも似た男前で人気者。よくも悪くも自己愛の強さが、彼の成長を支えている。
■観賞ポイント/足の指を使って、音もなく静かに切れ込む。ありえないくらいの足首の柔らかさで、少し左側で倒れながらシュートを打ち込む。
■活躍の場/彼のピークはおそらく35歳です。東京五輪で完成形が見られるはず。
久保弘毅
愛知高―愛知大 26歳 187cm95kg 右利き ポスト
久保弘毅
・役割に縛られすぎない
バックプレーヤーで求められる役割(タイプ)を改めて整理しておきましょう。大まかに分けると4種類あります。パスが得意な司令塔(ゲームメーカー)。ロングシュートを打ち続けられる打ち屋。カットインで間を割るタイプ。さらにはファーストオプションにはならないけども、2人目、3人目で攻撃に絡むのが上手なタイプ。オフェンスがスムーズに流れるよう、この4タイプのうちから3人を組み合わせて、流れを変えたい時には違った役割の選手を投入するのです。
しかし若い選手が役割に縛られすぎて、自分のよさを見失うことも多々あります。特に「打ち屋」の役割を意識しすぎると、プレーのバランスが崩れてしまいます。
豊田合成の小塩豪紀は、中京大時代は非常に判断力の優れた選手でした。シュート、パス、カットインのバランスがよく、プレーの選択肢を上手に選べる印象がありました。ところが豊田合成での1年目で「打ち屋」の役割を意識しすぎるあまり、無茶打ちのシュートが増えてしまいました。エースの役割を期待されて、先輩たちからも「1年目だから自由に打っていい」とお墨付きをもらっていたとはいえ、あまりにも強引なシュートが目立ちました。2014年度に得点ランキング2位で最優秀新人賞にも選ばれましたが、「小塩はハンドボールが下手になったんじゃないか?」といった声も聞かれたほどでした。
1年目の反省を踏まえて、2年目に小塩はプレー内容をかなり整理してきました。彼本来のバランスのよいプレーが戻り、無茶打ちのシュートが減りました。生真面目な選手なので、1年目は「打ち屋だから、自分が打たなきゃ」という気持ちが強すぎたのでしょう。
こういう「役割の落とし穴」は他にもあります。パスの上手い選手なのに「途中出場だから、点を取りに行かなきゃ」と強引なシュートばかり選択すると、監督のゲームプランと食い違ってきます。監督はきっと「お前のポストパスで流れを変えたいのに、なんで無茶打ちをするんだ!」と思っているはずです。一般的な役割のイメージと、実際の監督の思惑とは、微妙にズレがあったりするものです。野球で言うなら、監督が「強打の2番打者」を期待しているのに、昔ながらの2番打者のイメージにとらわれてバッティングを崩すのと似ています。
変に役割を意識することなく、自分の強みを素直に出せる選手が、本当に試合で役に立つ選手なのかもしれません。
久保弘毅
ドイツより meine Lieblingssachen