ハンドボールの魅力 ー バックプレーヤーのバランスを見る-2

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・役割に縛られすぎない

 バックプレーヤーで求められる役割(タイプ)を改めて整理しておきましょう。大まかに分けると4種類あります。パスが得意な司令塔(ゲームメーカー)。ロングシュートを打ち続けられる打ち屋。カットインで間を割るタイプ。さらにはファーストオプションにはならないけども、2人目、3人目で攻撃に絡むのが上手なタイプ。オフェンスがスムーズに流れるよう、この4タイプのうちから3人を組み合わせて、流れを変えたい時には違った役割の選手を投入するのです。

しかし若い選手が役割に縛られすぎて、自分のよさを見失うことも多々あります。特に「打ち屋」の役割を意識しすぎると、プレーのバランスが崩れてしまいます。

 豊田合成の小塩豪紀は、中京大時代は非常に判断力の優れた選手でした。シュート、パス、カットインのバランスがよく、プレーの選択肢を上手に選べる印象がありました。ところが豊田合成での1年目で「打ち屋」の役割を意識しすぎるあまり、無茶打ちのシュートが増えてしまいました。エースの役割を期待されて、先輩たちからも「1年目だから自由に打っていい」とお墨付きをもらっていたとはいえ、あまりにも強引なシュートが目立ちました。2014年度に得点ランキング2位で最優秀新人賞にも選ばれましたが、「小塩はハンドボールが下手になったんじゃないか?」といった声も聞かれたほどでした。

 1年目の反省を踏まえて、2年目に小塩はプレー内容をかなり整理してきました。彼本来のバランスのよいプレーが戻り、無茶打ちのシュートが減りました。生真面目な選手なので、1年目は「打ち屋だから、自分が打たなきゃ」という気持ちが強すぎたのでしょう。

 こういう「役割の落とし穴」は他にもあります。パスの上手い選手なのに「途中出場だから、点を取りに行かなきゃ」と強引なシュートばかり選択すると、監督のゲームプランと食い違ってきます。監督はきっと「お前のポストパスで流れを変えたいのに、なんで無茶打ちをするんだ!」と思っているはずです。一般的な役割のイメージと、実際の監督の思惑とは、微妙にズレがあったりするものです。野球で言うなら、監督が「強打の2番打者」を期待しているのに、昔ながらの2番打者のイメージにとらわれてバッティングを崩すのと似ています。

変に役割を意識することなく、自分の強みを素直に出せる選手が、本当に試合で役に立つ選手なのかもしれません。

久保弘毅

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