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チームの見どころ 【飛騨高山ブラックブルズ岐阜】昨年度女子7位

チームの見どころ

【飛騨高山ブラックブルズ岐阜】昨年度女子7位

【チームの戦い】
 ぎふ清流国体のチーム(HC高山)からスタートし、日本リーグに加盟してからもDF重視のチーム作りで、毎年着実に成果を残してきた。しかし初のプレーオフ進出を目指した昨シーズンは、深刻な得点力不足に泣かされ、最下位に沈んだ。チームの柱だった廣田(旧姓柴田)、中村らが抜けた今シーズンは再建の年になりそう。「最高の国体チーム」から「末永く戦えるクラブチーム」へ、方向転換が求められる。

【予想布陣】
LW:比嘉桃
LB:金恩恵(友野)
CB:宮崎(松本、比嘉美)
RB:和田(岸本、日下石)
RW:山中(比嘉美)
PV:陣野(佐伯)
GK:田口(菊池)

6:0DFと5:1DF他

 かつては4:2DFや3:3DFなど他のチームにはない引き出しで、ロースコアの接戦に持ち込んでいた。DFの時間が長くなればなるほどブルズのペース。若返った今シーズンは、例年ほどのバリエーションが見られない。
 勝つとしたら、GKの田口が止めまくって、エースの金恩恵が10点近く取るしかないのが現状。宮崎のミラクルシュートや、大型左腕・岸本の2次速攻でのロングなどもあるが、過度の期待は禁物。現時点では10点台のロースコアの試合運びに徹するしかない。

【人事往来】
IN
佐伯(福岡大)
中島(東京女子体育大)
池之端(引退後、コーチから復帰)

OUT
廣田(引退)
中村(引退)
舩坂(引退)
田中(引退)
松本(引退)

 球回しの起点だった廣田、変則DFの切り札だった中村が抜けた。ブルズの象徴とも言うべき2人の穴は大きい。廣田の代わりは宮崎、中村の代わりは山中と、それぞれに後継者はいるものの、前任者と比べると少々物足りない。特に変則DFの切り札だった中村のような「1人で2人を守る」選手が、1人でも多く出てきてほしい。小さくても動けて勘のいい中村は「DFのブルズ」の象徴だった。
日本代表候補にも選ばれた大型サイド田中の引退は予想外。次代のブルズを背負える逸材だっただけに、わずか2年間で終わるのはもったいなかった。
 新人ではポストの佐伯の出番が多くなっている。フィジカルの強さがあるので、得点力のあるポストに育つ可能性を秘めている。
 リーグ中断期間の12月に、池之端コーチの現役復帰が発表された。攻守にチームを背負ってきた池之端の復帰が、低迷するブルズの起爆剤になるか。爆発的な得点力のあるタイプではないが、ポストと真ん中のDFで試合を落ち着かせてくれるだろう。

【指揮官】
山川由加監督
 元日本代表で、桜花学園高校で監督を務めたのちに、岐阜県の成年女子の監督に就任し、日本リーグに参戦してからも変わらずチームを見ている。田口や比嘉桃は、桜花学園時代の教え子。DFに特化したチーム作りが上手い。「七色のDF」を伝統にしている飛騨高山高校とよく似たスタイルなので、高山市のハンドボール文化にフィットしている。友野とよく似ているが、血縁関係はない。

【キープレーヤー】

陣野瞳
陣野瞳

陣野瞳
 チームを背負ってほしい大型選手。キャプテン就任1年目の昨シーズンはケガで苦しんだが。今シーズンは攻守にチームを牽引する。攻撃ではポストに入り、守っては真ん中でDFラインを統率する。現役復帰した池之端弥生コーチの助けを借りながら、真の大黒柱に成長してほしい。性格、ビジュアルともに申し分なし。人柄はいいけど、少し引っ込み思案な選手が揃うブルズのイメージを変えるような活躍を。

【この技を見よ!】

宮崎亜紀穂
宮崎亜紀穂

宮崎亜紀穂のミラクルシュート
はっきり言って、確率はよくない。ふにゃふにゃとカットインを繰り返すけど、10本打って2本入るかどうか。それでも大事なところで1本決める「星の強さ」を持っている。
印象に残っているのが、2年前のリーグ終盤の三重戦。エースの金恩恵が負傷して、最大5点ビハインドという絶体絶命のピンチに出てくると、要所でミドルを決めて引き分けに持ち込んだ。この試合で三重はプレーオフ進出を逃し、ブルズはプレーオフに望みをつないだ(最終的には5位で、プレーオフ進出はならなかったが)。
徹底マークされると苦しいものの、宮崎の1点は特別な1点。チームの盛り上がりが違う。

久保弘毅

チームの見どころ 【トヨタ紡織九州】昨年度男子8位

チームの見どころ

【トヨタ紡織九州】昨年度男子8位

【チームの戦い】
 元々はアラコ九州時代に元島邦彦監督が「小さい選手だけで勝つ」コンセプトを掲げ、韓国スタイルのハンドボールで力をつけてきたチーム。ところが急激な世代交代と大型化で、チームの色が不明瞭になり、ここ数年は低迷していた。今シーズンは金東喆ら韓国人選手を入れて、チームカラーも韓国スタイルに戻して原点回帰。まだ結果は出ていないものの、チームの文脈に合った軌道修正で、強いレッドトルネードの復活を目指す。

【予想布陣】
LW:梅本(藤本、上田)
LB:朴永吉(田中、八巻)
CB:金東喆(中本、津山)
RB:松浦(中畠)
RW:鈴木済(荒川)
PV:酒井(野田、田中)
GK:岩下(下野)

3:2:1DFと6:0DF

若くてそこそこ名の知れた選手がいるけど、コンセプトが感じられず、選手も勢いだけでプレーしていた。そんな寄せ集め状態から、今年は金東喆を司令塔に据え、チームカラーもヨーロッパ志向から韓国スタイルに戻し、チームに一本筋が通った。ヨーロッパスタイルと韓国スタイルのどちらがいい、悪いではなく、かつて紡織は韓国人の呉相民を軸に10年以上チームを作ってきた歴史がある。だから韓国スタイルへの原点回帰は間違っていない。ポストの酒井は和製朴重奎(大同特殊鋼)になれる可能性があるし、八巻はトップDFというはまり役を得て、伸びやかにプレーするようになった。
とはいえバックプレーヤーの決定力不足は相変わらずで、いつまでもベテラン左腕・中畠に頼らざるを得ない状況が続いていた。そんなタイミングで、2人目の韓国人選手・朴永吉を補強。エースポジションを任せられる選手が決まり、チームが一気に好転するか。GK岩下のアクロバティックなセーブ、キャプテンのGK下野の勝負強さ、ポストの酒井の重さなど、光るものを持った選手はいるので、韓国人2人が噛みあえば、年明け以降は台風の目になるかもしれない。

【人事往来】
IN
小峰(国士舘大)
美並(中部大)
朴永吉(韓国)

OUT
なし

 昨シーズン末に金東喆が入り、今シーズン途中から朴永吉も加わった。2人のコンビネーションが冴えてくれば、大型ポストの酒井をこれまで以上に活かせるだろう。金と朴でDFをへこませて、右バックの松浦がロングを打ち込むパターンも期待できる。
 新人ではGK小峰が地元の佐賀清和出身。佐賀のトップチームとも言うべき紡織での活躍に期待がかかる。

【指揮官】
石黒将之監督
 ドイツでのプレー経験があり、監督就任当初からヨーロッパ志向のハンドボールを打ち出していた。しかし大型化がうまくいかず、4年目の今シーズンは韓国スタイルに方向転換している。これまでの失敗を素直に認めたうえでのことだから、決して悪いことではない。クイックスタートだけに頼らず、ゲームデザインをもう少しはっきり示せるようになれば、勝ち星も増えるだろう。

【キープレーヤー】

岩下祐太
岩下祐太

岩下祐太
 見ていて楽しいGK。アクロバティックなセービングに攻撃的なスローイング、戻りながらでも正確に位置取りができるセンスなど、1つひとつのプレーに華がある。見栄えのするキーピングに安定感が加わり、昨シーズンはシュート阻止率0.387で、レギュラーシーズン1位に輝いた。
 非常に運動能力が高く、ゴールとベンチを行き来する瞬発力に、相手の7人攻撃の隙を突く直接ゴールなど、新ルールが求めるGK像に最も近い選手。世界で戦うには少々小柄(183cm)かもしれないが、技術だけでなく、精神的な成長も示して、日本代表に選ばれてほしい。

【この技を見よ!】

酒井翔一朗
酒井翔一朗

酒井翔一朗のフィジカル&メンタリティ
 見た目も体格も朴重奎(大同特殊鋼)に似てきた。ライン際での強さは群を抜く。しっかりと位置取りした時の強さは、日本の若いポストの中では一番では。
日本代表ではオルテガ監督、シグルドソン監督に代々可愛がられ、ギリギリのところでメンバー入りするしぶとさもある。「外国人監督には、声を出してなんぼ。大声を出してアピールするだけ」と笑っているが、気迫を前面に出すプレースタイルは仲間からも信頼されている。また日本代表の相川浩一ストレングスコーチにも積極的に質問するなど、体作りの取り組みも高く評価されている。
いつも朗らかで、人当たりのいい好青年。取材するたびに「これからさらに伸びていくんだろうな」と感じさせてくれる。素直な向上心が、彼の一番の武器かもしれない。

久保弘毅

チームの見どころ 【トヨタ自動車東日本】昨年度男子7位

チームの見どころ

【トヨタ自動車東日本】昨年度男子7位

【チームの戦い】
 神奈川県の相模原市にあったセントラル自動車が、宮城県への移転を機にトヨタ自動車東日本となり、日本リーグに参戦。元日本代表主将の中川善雄監督のもと、着実にステップアップし、リーグ加盟4年目の2015年度(第40回)には初のプレーオフ進出を果たした。昨シーズン(第41回)は故障者続出で7位と後退したものの、今シーズンはアグレッシブなDFを武器に、上位と互角の戦いを続けている。

【予想布陣】
LW:河内(桑名)
LB:濵口(上野、郷古)
CB:玉井(川端)
RB:川端(堤、山田)
RW:吉田(﨑前、川端)
PV:遠山(上野、野間、楳木)
GK:関口(西出)

6:0DF(フローDF)

かつては松本をトップに据えた3:2:1DFが強力な武器だった。しかし松本が故障で長期離脱していることもあり、現在は仕掛ける6:0DF(中川監督は「フローDF」と呼んでいる)をメインに戦う。日本女子代表のオープンDFほど極端に上下を分けないが、状況に応じて真ん中の上野が浮くなど、アグレッシブな仕掛けでパスカットを狙う。OFの人だった濵口、上野が真ん中で通用しているのは、中川監督の我慢強い指導の賜物。河内はパスカットの嗅覚が素晴らしく、GK関口はシュート阻止だけでなく、スローイングも年々上達している。
攻撃では左腕・山田の状態があまりよくない中、もう1人の左利き・堤が急成長。学生時代の自信を取り戻した。エース兼司令塔の玉井が切れ込み、大砲の濱口がロングを打ち込み、吉田が淡々と右サイドからシュート決めれば、東日本のペース。故障者だらけだったポストに遠山と野間が戻り、今年は戦えている。

【人事往来】
IN
楳木(筑波大)
西出(日本体育大)

OUT
永瀬(引退)

 一度に多くの選手を獲れないため、選手層がやや薄い。関口が円熟してきたタイミングで、次世代のGK西出を獲得。故障者だらけだったポストにサイズのある楳木と、的確な補強はしているが、今シーズンから3回戦総当たりになったことを考えると、少々心もとない。年間を乗り切るために、選手枠をもう2~3人増やせたら、再びプレーオフに出場できる可能性も高まるのだが…。

【指揮官】
中川善雄監督
 中央大時代から名キャプテンの呼び声高く、日本代表でもキャプテンを務めた。三陽商会、大崎電気で現役を続けたのち、理論と統率力を買われて、トヨタ自動車東日本で監督業をスタート。世界に通用する選手、チームを育てるべく、段階を追って丁寧にチーム作りをしている。OF型の選手ばかりだったチームを、ここまで守れるように育てた手腕は、もっと評価されていい。

【キープレーヤー】

堤由貴
 洛北高、明治大と、名の売れた左利き。高校の段階では「将来は右サイドで日の丸を背負う選手」と見られていたが、今もバックプレーヤーで得点力を発揮している。
東日本に入って3年目の今シーズンは、山田隼也の不調を補う活躍を見せている。アウトスペースに鋭く切れ込み、DFとかぶりながら横からミドルを打つなど、自分の強みを明確に示せるようになった。学生時代は「お山の大将」なところが見られたが、精神的にも成長が感じられる。あまり得意ではないDFでも、ハードワークする意欲が出てきた。  
堤の得点と出場時間が増えれば、チームも上を目指せる。山田が戻ってきた時の棲み分けにも注目。

【この技を見よ!】


吉田翔太のシュート精度
地味だけど、いつも淡々とシュートを決める。スペシャルな武器はなさそうだけど、どんなシュートもそつなく決める。あまり話題にのぼらないが、チームにとって絶対欠かせない選手。いい意味で余計なことをしない、生粋のフィニッシャーと言えるだろう。シュート率7割を期待できる、正真正銘の右サイドのスペシャリスト。故障が続く左サイド・松本雅史が戻れば、両翼の決定力はリーグトップクラスになる。

久保弘毅

チームの見どころ 【琉球コラソン】昨年度男子6位

チームの見どころ

【琉球コラソン】昨年度男子6位

【チームの戦い】
 長年司令塔を務めた水野裕紀が昨年から兼任監督になり、若返りに取り組んでいる。よくも悪くも、人の入れ替わりが激しいのがチームカラーで、今シーズンは大砲の趙顯章が移籍した。水野監督、村山、石田ら2008年リーグ加盟当初の一期生もベテランになり、次世代を担う生え抜きの育成が引き続きテーマになってくる。

【予想布陣】
LW:牧山(仲程、三村)
LB:石川(村山、棚原)
CB:村山(赤塚、水野、又吉)
RB:福田(村山、大和田)
RW:名嘉(浅井、中村)
PV:松信(伊計、連)
GK:内田(石田、田村)

6:0DF

 新人の仲程、浅井は決定力のある両サイドだが、まだDFに不安が残る。ベンチに近い側の時のみ出場して、DFでは牧山、名嘉が2枚目に入り、バランスを整えている。松信以外に真ん中を守れる人材がほしいところに、伊計が去年から台頭してきた。ここに大和田がもう1枚加われば、ローテーションが楽になる。以前にも増してOF型の選手が増えたため、かつてのコラソンの代名詞だった3:3DFは封印されている。
 攻撃陣ではバックプレーヤーの層の薄さが深刻。上手い選手は多いが、絶対的な決め手に欠ける。赤塚を左サイドに回せるくらいの余裕が出てくれば、四強に食い込めるのだが…。人手不足に悩んでいたタイミングで、元エース・棚原の復帰は朗報。

【人事往来】
IN
浅井(中京大)
仲程(東海大―デンマーク)
中川(朝日大)
東長濱(アドバイザーで復帰)
棚原(復帰)

OUT
趙顯章(豊田合成)

 左の大砲で、1年かけてチームになじませてきた趙が移籍した。真ん中を守れて、ロングが打てる趙の穴はとてつもなく大きい。台湾ルートで、趙に続く掘り出し物を補強できれば面白いが、若手を起用することも大事。新人では仲程、浅井の両サイドの決定力は、リーグでも通用している。
 チームの頭脳だった東長濱秀作が、今年からアドバイザーで復帰したのは嬉しいニュース。水野監督がコートに立った時に、ベンチワークを任せられる。また海外挑戦で宙に浮いていた棚原が復帰したのは大きい(10月21日の豊田合成戦から出場可能)。2年前はOFでの暴走が目立った棚原だが、東長濱アドバイザーなら棚原を制御できる。

【指揮官】
水野裕紀監督
 長年チームを率いてきた東長濱秀吉監督(東長濱秀作アドバイザーの父)に代わり、昨年から兼任で指揮を執る。選手との年齢も近く、毎日の練習をしっかりと見ることで、若手のモチベーションを高めてきた。チーム全体にハードワークを落とし込んでいるのも好印象。監督業が主とはいえ、スムーズなボール回しは健在。むしろ兼任になってからの方が、短時間で攻撃を立て直せているようにも見える。一時期ほど7人攻撃を使わなくなったが、勝負どころでは7人攻撃を仕掛けてくる。

【キープレーヤー】
福田丈

 右サイドのレギュラーだったが、趙が抜けた今年から右バックになった。元々が中部大インカレ優勝時の右バックで、本来のポジションに戻って「プレーしやすい」と喜んでいる。持ち味は視野の広いプレー。趙のようなロングの迫力は求められないが、コート全体が見えていて、正確にパスを配れる。シュートのバリエーションも豊富で、苦しい場面でのステップシュートはチームを救う武器になる。これまでの2年間とは異なる福田の魅力が、今年は見られるだろう。

【この技を見よ!】
・石川出のハードワーク

石川出
石川出

 大崎電気の時はスポットでしかコートに立てず、苦しんでいた。昨シーズンにコラソンに移籍してからは出場時間が増えて、攻守によさが出るようになった。自分のアピールだけにこだわるよりも、常にチームのことを考えてプレーした方が、石川の「らしさ」が出る。攻撃では常に前を狙いながら、周りを活かせる。守ってはハードワークで、味方を助ける。昨シーズンは特に、「DFでここまで身体を張るか!」というくらい、献身的なプレーが印象的だった。
打てて、守れて、勝負強くて、リーダーシップも発揮できる日体大時代のよさが、ようやく日本リーグでも見られるようになった。今年もフォア・ザ・チームのプレーでコラソンをリードしてくれるに違いない。年間通してチームの中心に置いておきたい選手なので、ケガには気をつけて。

久保弘毅

チームの見どころ 【豊田合成】昨年度男子5位

チームの見どころ

【豊田合成】昨年度男子5位

【チームの戦い】
 毎年的確な補強をしているのに、プレーオフにあと一歩届かない。昨シーズンも元スペイン代表のウーゴ・ロペスと、日本トップクラスのディフェンダー・武田享を補強しながら、5位に終わった。今年はラストピースとして田中茂監督を招聘し、悲願のプレーオフ初出場を目指す。

【予想布陣】
LW:野田(津波古)
LB:小塩(水町)
CB:樋口(藤)
RB:趙顯章(ウーゴ、今村)
RW:出村(今村、上田)
PV:橋本(舘盛)
GK:佐々木(藤戸、藤田)

6:0DF
 
 ウーゴを筆頭に、開幕から故障者続出で、ベストメンバーがなかなか組めないのが悩みの種。それでも3回戦制になった今シーズンは、合成の選手層の厚さがプラスに作用するだろう。各ポジションに一芸を持った選手がいるのが心強い。
 今シーズンから大きく変わったのがDFの配置。同じ6:0DFでも、今年は運動量を重視する2枚目に樋口を置いて、スタミナ切れが課題だったウーゴを2枚目から3枚目に配置転換した。趙はコラソン時代からハードワークに定評があり、DFでも真ん中で柱になってほしい存在。田中監督は脚力のある新人水町を、真ん中を守れるバックプレーヤーに育てようとしている。GK佐々木も含めてスケールの大きいDFラインは、合成の売りのひとつ。日本代表のダグル・シグルドソンヘッドコーチに見出だされた佐々木は、代表合宿で自信をつけて、今年から合成でも正GKになった。

【人事往来】
IN
水町(日本大)
藤(日本体育大)
趙顯章(琉球コラソン)
大橋(復帰)
OUT
榊原(引退)
中島(引退)
芳仲(引退)
藤堂(引退)
 
 かつての正GK藤堂、クイックシューターの中島ら、ひと昔前の合成を支えた主力たちが引退。血の入れ替えが進んでいる。
 新人の水町は、よくも悪くも「打ち屋」体質。打ち込める強さはあるので、いつ、どこで打つべきかを整理すれば、大きく飛躍しそう。藤はスピードのあるセンター。アップテンポな展開で役に立つ。趙の補強は、スタミナが切れやすいウーゴを補うだけでなく、2人同時にコートに立った時が楽しみ。ドイツでプレーしていた大橋は、練習生を経て復帰。いつも声を出す姿は、チームの雰囲気作りに欠かせない。

【指揮官】
田中茂監督
 三陽商会ではクレバーな選手で、日本代表の常連だった。引退後はスペインのバルセロナに留学し、その後はナショナルトレーニングセンターで指導していた。単独チームを見るのは49歳にして初めて。少々遅すぎる監督デビューにはなったが、理論派でコミュニケーション能力も高い。戦力は揃っているので、絶対的な統率力を示すことができれば、1年目からプレーオフ初出場の目標をクリアしてもおかしくない。

【キープレーヤー】
趙顯章(チャオ・シェンチャン)

趙顯章
趙顯章

 台湾代表の大型左腕が、琉球コラソンから移籍。ロングが打てて、体勢を崩しながらのアウト割りもできて、ポストパスもできる。チームにフィットしてくるこれからが楽しみ。勝負の責任を背負って、大事な場面で打ちに行くメンタリティが素晴らしい。またDFでのハードワークも趙の持ち味。積極的に動いて、ルーズボールに絡むあたりにも、人柄のよさが伺える。日本語を覚えて、大事な場面で「集中!」と言ったり、他チームの選手と試合後に肩を組んで「友達」と言うなど、愛すべきキャラクター。日本のハンドボール界に完全に溶け込んでいる。

【この技を見よ!】
・出村直嗣のシュート精度

出村直嗣
出村直嗣

 正統派のサイドシューターであり、日本で最も過小評価されている右サイド。フィニッシュの精度という点では、日本代表の渡部仁(トヨタ車体)、元木博紀(大崎電気)以上と言ってもいい。しかし「余計なことをしない」のが、出村のよさでもあり、物足りなさでもある。控えめで誠実な出村らしいと言えばそれまでだが、渡部なら回り込んでのミドルがあるし、元木にはスピードとブラインドシュートという飛び道具がある。出村もプレーの幅をもう少し広げてもいいのでは? 堅実無比のサイドシュートに、どんな味をプラスしていけるか。円熟期に入ったこれからの変わり身に期待。

久保弘毅