ハンドボール日本代表紹介 #28 永田しおり(オムロン)

永田しおり
永田しおり

・せっかちジャパンの生き残り
 まだ「おりひめジャパン」といった洒落た呼び名がなかった2011年頃、女子日本代表は一部の人から「せっかちジャパン」と呼ばれていた。当時の黄慶泳監督を筆頭に、選手にもせっかちさんが多かったため、そんな呼び名がついた。当時から若手でDFの中心に抜擢されていたのが永田しおりだった。デンマークにあとワンプレーで勝てそうだった2011年。フランス相手にリードながら、終盤の10連続失点で敗れた2013年。リオ五輪予選決勝敗退のショックを引きずった2015年。若返ったメンバーで決勝トーナメントに進めた2017年と、いずれも永田(し)はDFの要で経験している。5大会連続となる世界選手権への思いは、誰よりも強い。

 「DFのオムロン」で土台を作り、数多くの国際大会で磨かれた「当たりの強さ」が一番の持ち味。足でついていける機動力と、海外の大型ポストにも負けない強さを合わせ持つ。永田(し)よりも筋トレの数値が高い若手もいるが、対人接触の強さは今もチーム随一。よく食べて、激しく当たる、ナチュラルな強さで、チームの背骨になる。その激しさゆえに海外の審判から目をつけられがちで、たまに退場になることもあるが、ライン際での信頼感は絶大なものがある。

 OFではポスト(PV)に入り、ライン際で強さを発揮する。重さで勝負するポストだから、巧さと機動力で勝負する#3角南(果)と棲み分けができている。代表ではあまり見せないが、オムロンでは中継からドリブルで切れ込むなど、意外と小器用な一面もある。

 日本の副キャプテンであり、DFの要。せっかち時代は末っ子キャラだったが、偉大なる先輩たちの後ろ姿を追いかけるうちに、いいベテランになってきた。キルケリー監督就任当初から「傾聴の姿勢」で指揮官の意図を汲み取ろうとするなど、ハンドボールリテラシーが非常に高い。フリースローを取りまくって、相手の攻撃を分断する永田(し)の姿が、チームに勇気と落ち着きをもたらす。

久保弘毅